職人不足問題への根治的アプローチ。
先日、名古屋でとある団体のリフォーム事業者中心の研修会に講師として参加してきました。
私が講演を依頼されたテーマは、建築業界の根底を揺るがしている「職人不足問題について」でした。講演を終えた後のフィードバックで非常にご好評頂いたのでここでも数回に分けてその内容を書いてみたいと思います。
20年に渡り社員職人の育成、教育をしながら工務店の実業を行ってきた経験則と検証結果を持って、全国でも珍しい職人や施工管理向けに技術面だけでは無く、マーケティング理論をベースとした現場マネジメント改革の研修事業を行っている立場から、建築業界の未来に暗雲を立ち込めさせている職人不足問題への根治的アプローチを提言させていただきます。
私達が抱えている不安。
全国各地にセミナーや講演で呼ばれて、多くの工務店やリフォーム事業者の経営者とお会いする中で「先行きに対してどの様な事に不安を感じていますか」と訊いてみると、大まか「集客」と「職人不足」に集約されます。
特に、チラシや雑誌などの反響営業やポータルサイトでの集客を売り上げの中心に据えられておられる事業者は時代の変化と共にユーザーの反応の変化、反響の質と量が変わる事、また新築市場の減退によるリフォーム市場への新規参入業者増加による競合過多に今まで以上にデフレ傾向が加速するのは必至で、未来の集客に対してそこはかとない不安を感じておられる様です。
今が最も職人が多い状態。
少子化と人口減少、また、生産人口と言われる現役でバリバリ働いている人の可処分所得が減り続けている中、建築市場の質量共の縮小は私たちに大きな憂いをもたらしていますが、それよりも急激な下降曲線を描き減り続けている職人不足問題の方が実は深刻です。理由はシンプルで我々建築業はいくら受注しても工事が出来なければ売上にならない労働集約型の業態だからです。
「未来の年表」に示されていた通り、日本に若い女性が少ない(2020年に50歳以上の女性が半数超え)から少子化に歯止めがかけられないから人口減少は確定しているのと同じ様に、徒弟制度が完全に崩れ去った今、若手の職人を育てる機関がない以上、職人不足の加速を止める事は出来ず、実は今が最も職人が多くいる状態で今後は職人不足が加速して厳しくなるしかありません。
自分の周りを見渡して、女性の半数が50歳以上になっていて少子化が加速するのを防ぎようが無いという事実を実感する事がないのと同じ様に、若い職人を育てる機関が無いから今後職人が増えないと気づかれる方は少ないと思います。しかし、「職人は誰かが育ててくれるやろ」と他人事だと思って放置していると取り返しのつかない事になってしまいます。
全ての問題を解決してくれるブランディング。
集客や人材不足等、ありとあらゆる問題を解決する鍵は「ブランディング」にあると言われます。工務店でも地域で確固たるブランドを築いた会社には人が集まり、利益を上げて持続継続し続ける事が出来ると言われており、実は職人不足問題もブランディングが出来ている事業所にはあまり関係なく、私の知り合いにも楽観視されておられる経営者も少なからずおられます。
しかし、ブランド工務店としての地位を確率出来ているのは全体からすればほんの極く一部で、(私を含め)圧倒的多数の事業者は一筋縄ではいかないブランド化を目指して様々な角度から取り組みを進められている真っ最中ではないでしょうか。
ブランディングには外向けのプロモーションで良いイメージの認知を広げる華やかな「アウターブランディング」と共に、ユーザーの期待に応える高い質の商品やサービスを提供出来る様にする内向きの取り組みが欠かせません。モノづくりを生業とする私達はどちらかというと、まず実体である「インナーブランディング」に取り組まないと、集客すればする程、利益を吹き飛ばすクレームのタネを撒き散らす事になりかねません。
ブランドの品質は誰が保つのか?
工務店におけるインナーブランディングとは顧客からの評価の対象である現場での施工品質であり、建物の計画から完成までのプロセス、そしてその後のアフターメンテナンスを含むコミュニケーションが非常に大きな要素となります。特に現場品質の担保はブランド化以前に技術系専門会社として最低限行うべき事で、それはそのまま現場実務者の育成、教育へと直結します。
現場品質の担保と聞くと、施工管理者の採用、育成を行うべきなのですが、現場監督と言われて、責任と地位がある職業だった施工管理者もゼネコンと工務店ではまるで別の職業の様に大きな違いがあり、建築系の学校を卒業して工務店の施工管理を目指す若者は職人志望と変わらないくらい少ないのが現状です。
また、施工管理者の人材を整えることが出来ても、職人がいないからと闇雲に募集すると品質の低下を招く事は建築業界の方はよくご存知だと思います。「かき集めた職人に顧客満足無し。」スポット職人の施工はクレームの時限爆弾を埋めてまわるのと同じだと言われた経営者の方もおられます。
タマゴが先か鶏が先か?
圧倒的なブランディングが出来れば職人不足問題も解消出来る、その為にはインナーブランディングが重要で、現場品質の向上には施工管理者と共に職人の採用と育成、そして実務者に品質を保つ意味と意義を理解してもらう技術的な面以外のモラルや理念に向き合う教育が欠かせない。まるで卵と鶏の論理ですが、解決の鍵は経営者、営業サイドと現場実務者との間の「目的意識と状態管理」という概念の共有ににあると考えています。それには卵ではなく、鶏を育てる決意が必要です。
とにかく、現時点で目を逸らすべきではないのは、上記のグラフに示されている通り、建築市場の縮小、顧客ニーズの変化よりも、高齢化した職人が雪崩を打ったかの様に引退し始めるこの時期にあって職人を育てる機関がどこにも無いという事実で、今が最も潤沢に職人がいる状態である事の認識です。
今すぐは無理でも、3年あればなんとかなる。
私は神戸で大工をしておりましたから、震災後の圧倒的な職人不足、職人の売手市場を経験しています。昨日まで足場を組んでいた職人がある日突然大工に職変えして無茶苦茶な工事をやりまくった後処理をハウスメーカーの指定工事店として随分と手直し施工しました。その時のお施主様の悲しげなというか情けない顔は今も記憶の片隅に残っています。
ある日突然大工になるのは流石に無理がありますが、住宅の欧米化とプレカットの普及、また工具の進化で今や大工と言っても難しい仕事は少なくなっており、弊社では新卒採用から3年で現場担当者として施工と現場管理ができる様に育成しています。5年生になれば、あらかたの大工工事は出来る様になります。
工務店として、今後も事業を持続継続、もしくは規模拡大を目指されている事業者は今すぐに大工志望の若者を集め、人材育成に取り組まれる事を強くお勧めします。
とはいえ、若者に絶望的不人気職種である建築職人への志望者をどの様にして集めるのか?また、これまで職人の社員など雇用した会社で若者が入職しても続かないと言われる職人育成をするにはどの様にすればいいのか?と疑問は山ほどあると思います。次回の寄稿でその辺り(根治的問題解決)について書きたいと思います。
7月上旬に全国で【緊急提言!職人不足根治に今すぐ取り組むべきこと。】と題したセミナーを開催します。タイミングと開催地が合えば、ダイレクトに疑問、質問にお答えする場もありますので、ご参加ください。詳細は以下。
【緊急提言!職人不足根治に今すぐ取り組むべきこと。】
全国一斉、建築現場改革・ブランディングセミナー & 実践フォローアップ研修を6月末〜7月に開催します。
〜工務店が抱えるあらゆる問題を解決するブランド構築の糸口は現場にあり〜
売り上げの低下、職人不足、広告反響、集客の低迷、競争の激化、事業継承、採用難等々、工務店を取り巻く環境は厳しさを増すばかりです。全ての問題の解決の鍵は「ブランディング」にあり、今回のセミナーは華やかなプロモーションではなく、ブランド構築の基礎の部分を担う建築現場でのインナーブランディングに焦点を絞って、激動の令和の時代を地域工務店が勝ち残る方法論と職人不足問題の根治的アプローチの具体的な取り組み事例を公開します。また、オープンセミナー終了後、現場マネジメント改革に取り組む職人起業塾卒塾生向けの更なるブラッシュアップを目的としたフォローアップ研修を同時開催。現場実務者による現場改革の実践の輪が全国に広がっているのを体感頂けます。公式HPはこちら→https://www.shokunin-kigyoujyuku.com
全国一斉、建築現場改革・ブランディングセミナー & 実践フォローアップ研修へのお申し込みは一般社団法人職人起業塾公式HPから→https://www.shokunin-kigyoujyuku.com
もしくは、それぞれの地域のイベントページからどうぞ。チカラボ読者の方には割引対応とさせて頂きます。
【東京開催】
□日程:7月5日(水)14時~18時30分
□場所:株式会社 Ship セミナールーム
https://www.facebook.com/events/375661006401900/
【福岡開催】
□日程:7月10日(水)14時~18時30分
□場所:パナソニック リビング ショールーム 福岡 2階会議室 福岡市中央区薬院3-1-24
https://www.facebook.com/events/2549830991717642/
【鹿児島開催】
□日時:7月11日(木)14時~18時30分
場所: NCサンプラザ天文館 鹿児島市東千石町2-30 2階E-3会議室
https://www.facebook.com/events/3276643095694608/