【第27回】 地域工務店の経営戦略の実例⑭ 完成見学会を超重視した戦略

2024/04/1111:57222人が見ました

〇2024年集客・契約の傾向 

 2024年に入り集客に変化が表れています。コロナ期間中の住宅着工増(住宅コロナバブルとでも言うべき)の反動減となった2023年以上に影響が大きく出そうです。一方で契約確度の低いお客様の来社来場が減り、商談化率(商談化÷新規来場)(商談化÷新規来場)・成約率(契約÷新規来場)ともに上昇しているイメージです。私は以前から商談化率40%・成約率15%をキープすることをお伝えしていますが、2024年は商談化率60%・成約率30%程度を目指すべきだと考えています。 

 住宅取得者層がネット上で情報収集するようになったことで、吟味をしたうえで気に入った工務店・ハウスメーカーにのみリアルで来社来場する傾向が強まりました。その時点で候補を2~3社に絞っている状態であり、いきなり「準決勝・決勝」の状態です。従ってわざわざリアルで来社来場いただいたお客様から、どのような流れで受注を獲得するか。セールスステップの構築が非常に重要です。そうなれば成約率の高い営業マンに仕事を集中せざるを得ませんので、新人営業マンの成長チャンスが減ることも課題になりそうです。
 

〇完成見学会を会社全体で本気で取り組む 

 顧客との接点が絞り込まれつつあるなかで、「モデルハウス」「完成見学会」の重要性がさらに高まっています。

 イベントの一番の目的は集客の山を作ることです。年間の受注計画を立てるためには、集客の計画を立てておかなければいけません。モデルハウスや見学会の計画を立てずに年間の受注目標を立ててもそれは「絵に描いた餅」です。集客がないのに商談化はあり得ませんし、受注もありません。前述の『商談化率・成約率』は各社の過去実績から導き出された数値を使用しますので、予測したとおりにその比率で推移するとは限りませんが、理論値がなければ自社の集客状況や営業スキルの善し悪しが分からなくなってしまいます。

 お客様は実物件を見学して広さや間取り・デザインを実感されますので、やはり住宅を定期的かつ数多くリアルで見学できる「モデルハウス」「完成見学会」に勝るイベントは他にはありません。

 「モデルハウス」では、昨今VR展示場などオンラインとリアルを併設する例も増えていますが、いまのところ参考にはなれどほとんど成約面での効果がありません。

 「モデルハウス」には常設型と移動型があります。モデルハウスは経過年数と共に集客は減少します。私は以前から、資金の固定化を防ぎ常に新しい提案をすること、また社内人財育成の観点から、移動式のモデルハウスをお勧めしています。

 「モデルハウス」の難点は資金力が必要になることです。この点少ない投資でも集客の山をつくることができる、非常に効果的な方法は「完成見学会」なのではないでしょうか。この完成見学会を、どういった頻度で、どういう準備をして見学会を開催するのかは、新規来場減少時代の工務店経営にとって、あらためて超重要事項となっているのです。 


〇完成見学会を定期開催するために 

完成見学会開催の要点を簡単に箇条書きにしてみました。

「完成見学会」開催のポイント
1) 建物コンセプトを明確にし、受注前から家づくりにタイトルをつける。 
2) 契約時にお施主様の確約をもらう。
3) 開催条件としてアップグレード等のサービス工事を提供する。値引きは避ける。
4) 工程をずらさない(完工時期はある程度余裕を持つ。開催タイミングも大切)。 
5) 開催告知は完成写真撮影前(1か月前)から行う。
6) 家具を持ち込みしっかり設営する(家具レンタルなど活用)。
7) プロのカメラマンで写真撮影し、Instagram投稿用の画像をストックする。 
8) 見学会開催後は、ホームページで開催報告を行う。
9)開催回数:年30棟工務店で最低月1回は行う(開催率50%を目安に)。
10)物件はある程度は選んだ方が良いが、できるだけ頻度の方を優先する。 
(作成:ソルト 青木隆行氏)


 昨今『お施主様のプライバシー問題』『工期が厳しい』『お施主様の大切な建物に何かあってはいけない』などの理由から完成見学会を積極的に開催しない工務店を目にすることがあります。

 『お施主様のプライバシー問題』 については、予約制見学会にして詳細の住所は広告に入れないなどの対策を施すことで、施主様のプライバシーを保護することができます。またお施主様との交渉を進めるには、先方のインセンティブも必要です。条件としてアップグレードなどのサービス工事を提案するのも良いでしょう。こうして契約段階で交渉・確約を得ておくことで、完成見学会の開催率50%も十分実現可能です。

 『工期』については、取り決めた工期を予定通りに進めていくことも大変重要です。各種申請や土地・住宅ローンなどで問題が発生し工期を遅らせてしまうのは見学会開催に限らず協力業者のローテーションや会社の収益性にも影響が出てきます。工期が厳しくなってしまう理由は何パターンかに大別されますので、工期遅れをさせないようなチェックを入念に行うことも重要です。

『建物への傷の心配』については、確かにお施主様の大切な住宅に傷をつけてはいけませんので、設営時に十分な養生をするなど配慮をすることはとても大切です。場合によっては小さなお子様の入場を制限する(建物外でお子様が遊べるスペースを設ける)などの配慮を忘れないようにしておくべきです。

 以上のようなポイントを明確にして営業や広報部門だけではなく全社で、完成見学会を中心に進めることにより素敵な家づくりを一人でも多くの方に見学してもらえるようにしていくことをお勧めします。

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