消費スタイルから考えるブランディング戦略2019

2019/07/2021:32691人が見ました

こんにちは
ネクストプラスの戸谷です。

この連載では「中小工務店が自社ブランディングを確立して、行列のできる工務店になる方法」についてお伝えしています。 

今回はアンケート調査のデータをもとに、消費トレンドから考えるこれからのブランディング戦略を検討していきたいと思います。

 

【目次】

1:消費スタイルのメガトレンドとは?

2:共働き世帯と消費スタイルの変化

3:時代遅れ?のママ系ブランディングとリブランディング

4:ローコストか単価アップか

5:これから注目の「ゆとり世代」について

6:SNSの情報とリアルな口コミ

7:まとめ

 

 1:消費スタイルのメガトレンドとは?

野村総合研究所という研究機関が3年ごとに「生活者1万人アンケート調査」を実施しています。その中で消費スタイルの変化という項目があります。

いくつかの項目があるなか、2000年から2018年にかけて右肩上がりに割合が高まっているのが「使っている人の評判が気になる」と言う項目です。

この背景にはSNSとスマートフォンの広がりがあります。

2004年にFacebookmixiが公開されました。Twitter2006年、Instagram2010年です。口コミサイトとして有名な「食べログ」は2005年の公開です。

つまり2000年代後半からお客様が自分の体験を公開し始める環境が整います。その流れを加速させたのがスマートフォンです。何かを買ったり、体験したことを、すぐその場で情報発信できるようになりました。

ちなみにiPhone2007年に発表されています。日本でスマートフォンが急拡大するのは2010年に入ってからです。

同時に商品やサービスを購入する際に利用する情報源として、右肩下がりに割合が下がった項目が「ラジオ、新聞、雑誌の広告」と「新聞の記事」です。

これまでのコマーシャルやマーケティングの手法よりも、SNSや口コミの評判を重視していることが数字的にも証明されています。

  

2:共働き世帯と消費スタイルの変化

もう一つ大きなトレンドが「共働き世帯の増加」と「共働き世帯年収の増加」です。

 

2003年は48%だった共働き世帯が、2018年には約60%まで増えてきています。そして2015年以降、共働き世帯年収に大きな変化が起きました。世帯年収が1000万円以上と500万以上の共働き世帯が7割を超え、8割に迫るところまで来ています。

そして世帯年収が増加している夫婦共働き世帯は「プレミアム消費」と言われる消費スタイルを取る傾向があります。特徴を一言でいうと「自分が気に入った付加価値には対価を払う」です。

実際「とにかく安くて経済的なものを買う」という消費価値観は2000年には50%でしたが、2018年には34%と、右肩下がりに減少しています。
 

共働き世帯は住宅を購入するタイミングにも特徴があります。以下はリクルート社が実施した「2018 注文住宅動向・トレンド調査」のデータです。

共働き世帯が住宅購入検討を開始したタイミングは、「結婚~出産」までの間で、他の世帯より高くなっています。そして入居したいタイミングは「子どもの保育園入園」のタイミングが高い傾向があります。

一報共働き以外の世帯は、購入検討を開始したタイミングも入居したいタイミングも「子どもの小学校入学」が高くなっています。

これは出産後も退職せず、育休や時短勤務を選びながら仕事を続けていきたい人が増えてきていることが背景にあります。政治的にも男性の育休義務化が検討されているので、この流れはさらに加速していくと考えられます。

つまり収入が高い共働きの世帯をターゲットにするのであれば、学区よりも保育園の利便性を考えることも必要になってくるわけです。

 

3:時代遅れ?のママ系ブランディングとリブランディング

時代は変化し続けています。もちろん工務店のブランディングも変化を求められます。先月の記事で紹介している通り、弊社ではママ系のブランディング支援を得意としています。

しかし昨年ごろから、ママたちから「ちょっとイメージと違うんですよね」という指摘がぽつぽつ出てきました。最初はイレギュラーな指摘だと思って気にしていなかったのですが、非常に重要な指摘だということに気づきました。

67年前につくったママ系ブランディングは、「長時間家に居るママ」をターゲットにしてメッセージから各種ツールをつくっていました。ところが共働きの世帯が増え、出産後も仕事を続けることが前提のママが増えていたのです。

そこで今、新たにママ系ブランディングを検討している工務店や、リブランディングを考えているママ系ブランディングのプロジェクトでは、地域性を考慮にしながらも「長時間家にいるママ」から、共働きで「仕事をしているママ」を想定したブランディング展開も考慮するようになりました。

  

4:ローコスト化か、単価アップか、

ブランディング支援をしているときに悩む部分に、「ローコストを選ぶか、単価アップ(高額化)を選ぶか」問題があります。人口減少、着工棟数減が確定している未来に向けて今、ブランディングも戦略も2極化しています。

先ほども紹介した「2018年注文住宅動向・トレンド調査」の建築費用(全国)を見ても、2018年に増加した価格帯は「1,500万円未満」と「3,000万円~3,500万円」未満です。

ちなみに「1,500万円~2,000万円」の価格帯は年々減少し続けています。

 

ブランディングの観点から考えると「共働きでこれからも仕事を続ける」ことを考えている世帯を対象にするか、「子育てを機に一時的にでも専業主婦()になる」世帯を対象にするかの選択とも言えます。

これはママ系や子育て世代といったターゲット分けでは広すぎる時代になってきたとも考えられます。

※もちろん実際にどのターゲットを狙うかは会社の理念、地域性、競合なども踏まえて検討していきます。

  

5:これから注目の「ゆとり世代」について

一般的に1987年から2004年に生まれた人たちが「ゆとり世代」と言われています。つまり32歳以下の人がゆとり世代になります。

住宅購入の平均年齢は30代後半ですが、住宅購入年齢分布でみると30代前半までに4割以上、30代後半まで入れると6割以上の人が住宅を購入することを考えると、ゆとり世代の動向を押さえることは非常に重要です。

ブランディングや集客の観点から考えるとやはりゆとり世代が別名「デジタルネイティブ世代」と言われていることは見逃せません。

彼らは第1章でご紹介したFacebookやmixiTwitterやInstagramといったSNSがコミュニケーションツールとして完全に定着しています。他人からの評価や口コミを重視する傾向がより強いのが特徴です。

チラシやSNSなどで情報を見つけてもすぐには行動しません。スマートフォンで各社のホームページや口コミサイトなどで比較検討したうえで行動しています。※ここでの行動とは資料請求や見学会への参加を意味しています。

多くの工務店がSNSでの情報発信に力を入れているのは当然の流れです。しかしこれからこの流れも変わってくるかもしれません。

  

6:SNSの情報とリアルな口コミ

その原因は2016年のアメリカ大統領選挙で注目された「フェイクニュース」です。誰もが簡単に情報発信できるようになった結果、情報の信頼性が揺らいでいます。先に上げた「食べログ」などの口コミサイトの書き込みに対しても同様です。

そこで注目されているのが「リアルな口コミ」です。人は「自分と同じコミュニティ」にいる仲間の情報を強く信じる傾向があります。これからは「自分と同じコミュニティに属している仲間の口コミ」が重要になっていきます。

「自分と同じ」と感じさせる共感を生むには「同じ悩み」や「同じ価値観」を共有していることが条件になります。「ママ」や「子育て世代」という絞り込みでは足りません。共働きのママだったり就学前の子育て世代くらいの絞り込みが必要な時代になりつつあります。

絞り込めば絞り込むほどターゲットの母数は少なくなりますが、その分ターゲットの満足度を高めることで、同じコミュニティの仲間に口コミをしてもらえる仕組みやブランディングを成功させる可能性が高くなっています。

  

7:まとめ

 これからの工務店ブランディングの戦略を考える上で重要な要素は、

・ゆとり世代の共働き世帯

・ローコストか単価アップのどちらを選択するかの判断

SNSなどのネット集客とリアルコミュニティ

です。

注意してほしいのは「他社の成功事例を真似しても上手くいかない可能性が高い」ということです。自社の強みは何か、棟数を追うのか、利益を追うのかといった、会社の理念やビジョンに基づいて、ターゲットや戦略を考えることです。

ゆとり世代の消費者は、比較検討や情報収集能力が高いので競合との違いが明確でないと選ばれません。その違いをつくるのが理念やビジョンです。 

今回の記事の情報は理念やビジョンをかたちにするとき、つまり戦略を決めるときに重要な視点になります。ぜひブランディング戦略を検討する参考にしてください。

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