「マーケティング」と「ブランディング」の違いが分かっている工務店が伸びている理由

2019/08/2020:111153人が見ました

こんにちは
ネクストプラスの戸谷です。

この連載では「中小工務店が自社ブランディングを確立して、行列のできる工務店になる方法」についてお伝えしています。

今回はなぜ今マーケティングよりもブランディングを意識している工務店の業績が良いのか?その理由を「スマートフォン(スマホ)の普及」と「消費者の購買心理の変化」をもとに解説しながら、行列ができる工務店が考えていることをお伝えしていきます。
 

【目次】

1:スマホ普及の影響

2:お客様の購買心理の変化を理解する

3:マーケティングとブランディングの違い

4:マーケティングの「難易度アップ」と「効果縮小」について

5:まとめ

 

1:スマホ普及の影響

マーケティングやブランディングを考えるときに外せない社会的背景が「スマホの普及」です。スマホの代表ともいえるiPhoneの登場は2007年、従来型の携帯電話(ガラケー)の普及率を超えたのが2013年、そして2019年にはスマホの普及率は85.1%に達している調査結果もあります。特に現役世代への普及率は90%を超えています。

スマホが普及する1015年前は会社のホームページをつくれば反響を獲得できた時代でもありました。当時はインターネットでの情報収集といえば、主に男性が会社か家にある唯一のパソコンを使って情報を集めるのが一般的でした。ところがスマホの普及によって大きな変化が生じます。

通勤時間や子育ての合間など、本当の意味でいつでも、どこでも、誰でも、かんたんに情報にアクセスすることができるようになります。男性だけではなく女性(もしかしたら女性の方がともいえるかもしれません)もスマホを通じて気軽に情報を検索するようになったことを意味します。


同時に工務店側でも、ホームページやSNS等での情報発信が重要だという認識の高まり、多くの会社がどんどん情報発信をするようになりました。その結果、以前はホームページで情報発信するだけでも「情報開示をしている工務店」「新しいことに積極的にチャレンジしているリフォーム店」というプラスのブランドが手に入りました。

しかし今では見やすく分かりやすく、かっこいい(かわいい)デザインのホームページや定期的な情報を発信していないと「この工務店、大丈夫かな。。。」「他の工務店の方が信頼できそう」というマイナスの評価を受けるようになっています。

このようにお客様の購買心理は時代と共に変化していきます。特に今、一次取得者の中心になりつつあるゆとり世代(~32歳)は「デジタルネイティブ世代」とも言われており、スマホの普及以前と以後の購買心理の違いがより顕著に表れ始めています。

 

2:お客様の購買心理の変化を理解する

お客様が商品やサービスを知ってから、実際に利用するまでの心の動きを購買心理と言います。1920年代のアメリカで公式化されたのが「AIDMA(アイドマ)というモデルです。

Aattention:認知、注意(存在を知って注意をひく)

Iinterest:興味、関心(興味や関心を持つ)

Ddesire:欲求(欲しいと感じる)

Mmemory:記憶(欲しいと思った記憶を思い出す)

Aaction:行動(行動する=購入する)

「店頭や広告で商品を知って、欲しいと思った記憶を思い出して購入する」という公式です。

しかしこれまで見てきたように、スマホの登場が消費者の購買心理にも大きな変化を生み出しました。その変化を日本最大の広告代理店である電通がインターネット時代の新しい購買心理として公式化したのが「AISAS」(アイサス)です。

AAttention:認知・注意(存在を知って注意をひく)

IInterest:興味・関心(興味や関心を持つ)

SSearch:検索(検索して比較検討する)

AAction:行動(行動する)

SShare:共有(口コミや投稿する)

先ほどのAIDMAとの大きな違いは2つのSです。

最初のSSearch)は、気になったものがあったらその場でスマホを使ってすぐに検索し、比較検討まで済ませるようになりました。ちなみにスマホの普及以前は、帰宅後にわざわざパソコンを立ち上げて調べるという作業が必要だったので、結局は検索されずに終わっていた可能性が高かったとも言えます。

もうひとつのSShare)は口コミやSNSへの投稿です。その結果、消費者は口コミや実際に体験した人のリアルな評価を簡単に見つけることができるようになりました。会社がホームページや広告を通じてどれほどいいことを言っても、その言葉をかんたんに信じなくなりました。特に住宅やリフォームと言った高額な商品・サービスではこの傾向がさらに強まります。

ここが大きなポイントになるのですが、スマホ以前のAIDMAモデルではお客様に伝えたい情報は会社側でコントロールできる前提で物事を考えていました。それがShare(口コミやSNSへの投稿)という新しい文化の登場で、会社の知らないところで、会社の意図しない情報が広がる時代になりました。

 

3:マーケティングとブランディングの違い

ここで「マーケティング」と「ブランディング」の違いについて、購買心理の変化をもとに考えてみましょう。

マーケティングを一言で説明すると、「商品やサービスを知ってもらい、購入してもらうまでの一連の施策」です。会社側から仕掛けて、コントロールできる施策であり、AIDMA的な動きと言えます。このゴールは最後のA:行動=購入です。

一方でブランディングは「お客様にある特定のイメージを持ってもらい、会社のファンになってもらう」ための一連の施策です。マーケティングに比べると中期的な戦略になります。こちらはAISAS的な動きであり、ゴールは最後のSShare)で、ファンを増やしリアルな口コミやSNSでよい情報を共有してもらうことです。

4:マーケティングの難易度アップと効果縮小について

これまでの説明でもうお分かりだと思います。情報発信する会社が増えれば増えるほど、マーケティングの難易度はアップし続けていきます。ここで戦い抜くのであれば専門の担当者を置いて、ホームページやSNSの情報頻度(量)と写真や文章の内容(質)にさらにこだわっていく必要があります。

時代はSNSやブログからリアルな口コミまで、会社がコントロールできない情報が大きな力を持つ時代になりました。会社から発信する情報の価値や信頼は相対的に低下し、効果も限定的になる傾向が加速しています。

 

5:まとめ 

今、集客や受注を伸ばしている会社は、自社からの情報発信(マーケティング)"だけ"に頼ることから脱却しています。購入した人だけではなく、来場してくれた人、資料請求してくれた人、情報を検索してホームページに来てくれた人、少しでもかかわりを持ってくれたすべての人にファンになってもらうことに力を注いでいます。

すぐに目に見える成果が出やすいのはマーケティングです。チラシの配布やSNS広告を出稿すれば、すぐに反応があります。しかしマーケティングは競合が激しく、その先にあるのはさらに厳しい競争です。

一方でブランディングは目に見える成果が出るまで時間がかかります。しかも手ごたえを感じるまで取り組みが正しいのか、確信を持ちつづけるのが難しいと感じることもあるかもしれません。でも、だからこそブランディング=良い口コミや投稿、ファンを増やし続けることは、中長期的に繁栄し続けるためには必須であり、取り組むべき価値があるのです。

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