ブランディングを成功させるために必須の3つのフレームワーク解説

2019/09/2021:48846人が見ました

こんにちは
ネクストプラスの戸谷です。

この連載では「中小工務店が自社ブランディングを確立して、行列のできる工務店になる方法」についてお伝えしています。 

前回の記事では「スマートフォン(スマホ)の普及」と「消費者の購買心理の変化」の話を通じて、デジタル時代の情報発信とブランディングについてお伝えしました。https://chikalab.net/articles/244


そこで今回は改めて自社ブランディングの確立方法について、よく寄せられるご質問の答えとその解決策をご紹介したいと思います。
 

【目次】

1:ブランドづくりでよくある間違い

2:自社よりも先に考えるべきこと

3: 大きな流れを掴むPEST分析

4:ブランディング戦略を策定する3C分析

5:自社のリソースを見直すVRIO分析

6:まとめ

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1:ブランドづくりでよくある間違い

 全国でブランディングに関するセミナーやワークショップを行っていますが、多くの方々が口をそろえて「ブランドづくりのために自社の強みを考えたのですが、差別化できるよい案が出てきません。」と相談にきます。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

自社で出来ることは、たいてい他社もできてしまいます。そして家づくりは特許や独自な工法というものがあまり存在しません。自然素材もどの会社でも扱えますし、パッシブデザインもホームページやSNSで上手く見せるだけならほとんどの会社で可能です。

IoTやスマートハウスなどは、まだ積極的にブランディングに活用している会社が少ないので上手く行くかもしれません。しかしそれも3~4年もすれば差別化にはならず、ブランド力も失われていくと考えられます。


ではどうしたらよいのでしょうか?

今回の記事では、多くの会社がブランド作りに苦戦する原因となっている「自社の強みから考え始めるとブランド作りに失敗する理由」と「その解決に役立つ3つのフレームワーク(考え方)」をご紹介したいと思います。

 
2:自社よりも先に考えるべきこと

 自分がどこにいるのか、周りの環境はどうなっているのか確認もせずに動き出してゴールに到着できるかどうかは、もはやギャンブルといっても過言ではありません。状況や環境を正しく理解することではじめて、最短距離でゴールするルートが見えてきます。

ブランディングも同じです。自社はどのように思われているのか?お客様は何を求めているのか?競合はどのようなブランディングをしているのか?またそれは上手く行っているのか、それとも思う通りに出来ていないのかなど、自社と周りの環境が分かれば、おのずと自社のブランディングの答えが見えてきます。


7年前、初めてママ系のブランディングをお手伝いした時のことをご紹介します。

その会社も差別化ができておらず、ブランディングに悩んでいました。そこでまずは徹底的にお客様のニーズと競合を調査しました。その結果、家にいる時間が長く、会社選びに影響力があるママに対してブランディングしている会社がいなかったのです。

そこで自社の強みは一切考えず、とにかくママが喜ぶこと、求めていることを徹底的に追及していきました。するといつの間にか「ママの家」というブランディング(認知)と、圧倒的な差別化に成功して、いまでもイベントを開催すると100名を超える集客を実現しています。


ではどうしたら上記の会社のように正しく現状を把握して、空いているポジションを見つけることができるのか。役立つ3つの分析フレームワークをご紹介します。

 

3: 大きな流れを掴むPEST分析

大きな視点から、自社を取り巻く環境がこれからどのように変化していくのかを考え、予測するために有効なフレームワークがPEST分析です。PESTとはPolitics(政治)、E= Economy(経済)、S=Society(社会)、T=Technology(技術)という4つの領域の頭文字から名づけられています。

 

2012年ごろから共働きの家庭が増えつづけ(Society:社会)、世帯年収500万円以上の世帯も増加し続け(Economy:経済)ています。そして2018年~2019年にかけては消費増税(Politics:政治)。が大きなトピックになりました。

そして20201月にはトヨタホーム(連結子会社のミサワホーム含む)とパナホームが統合して新会社が立ち上がるのはご存知だと思います。その背景には車や家電がインターネットを通じて繋がる「IoT」とスマートシティ構想(Technology:技術)が目の前に迫っていることが挙げられます。

このように大きな動きを把握して、常に先手を打って流れに乗ることができれば、大きなチャンスをものにすることも可能です。
 

4:ブランディング戦略を策定する3C分析

マーケティングを学んだことがある人は聞いたことがあるかもしれません。Customer:市場・顧客、Competitor:競合、Company:自社の頭のCをまとめたものが3C分析です。このフレームワークはブランディングを考えるときにも非常に有効であり、検討する順番に注意する必要があります。 


取り組みやすいからといって、自社(Company)から分析し始めると失敗してしまいます。

まず考えるべきことはCustomer:市場・顧客の分析です。今の市場や顧客が求めていることは何か?これから市場で成功する要因は何なのか?各種調査やアンケート結果から分析していきます。


次に行うのがCompetitor:競合の分析です。

競合がどのようなメッセージを発して、市場からどのように思われているのか(どんなブランディング戦略を行っているのか)を考えていきます。他にも市場の変化に対して、成功している会社が何をしているのかを検討することも非常に有用です。 


そして最後にCompany:自社のことを考えます。

市場や顧客の変化を予測し、競合がやっていない、できない、気づいていない商品やサービス、ブランディングや価値を提供できないかを検討していきます。


先に例としてご紹介したママ系ブランディングに成功した会社が取り組んだのは、まさにこの3C分析です。
 

5:自社のリソースを見直すVRIO分析

C分析のなかで、競合と自社の関係を検討するときに有益なフレームワークにVRIO分析があります。VRIO4つのキーワードの頭文字からできた造語です。

『価値(Value)』、『希少性(Rarity)』、『模倣可能性(Imitability)』、『組織(Organization)』の4つ視点から自社の強みと、競合に対する優位性を見極めるために使われるフレームワークです。ネーミングされた順番通りに、自社のリソースを評価していきます。
 

<「価値」の評価>

お客様にどのような価値を提供できているか。その量と質を見極めます。これしかできていないと、競合との差別化はできていないということになります。


<「希少性」の評価>

希少性は、どれだけ他で手に入れることが難しいものを提供しているかを分析します。競合が上手く行っていない、やっていない、できないことを自社だけが提供できていたら、それは希少性が高い=欲しければ自社と契約するしかなくなります。当然相見積もりや値引きが減り。利益も確保しやすくなります。


<「模倣可能性」の評価>

競合他社が模倣、つまり真似できるかどうかを評価します。別名、模倣困難性と表現することもあります。真似が出来なければできないほど、長期にわたる差別化とブランディングが可能になります。ちなみにマネされにくいもののひとつに「独自の歴史」があります。言葉や表現は真似しやすくても、これまで積み上げてきた実績や経験は、誰にもまねできないわけです。


<「組織」の評価>

会社の仕組みはもちろん、社員やスタッフの理解や協力体制を評価します。組織だけで競争優位性を生み出すことができるわけではありません。しかしここまで見てきた価値や希少性、真似できない強みを持続的に提供し続けられるかどうかは、組織の力にかかっています。

この点を見落とすと、せっかく良いブランディング・メッセージを見つけたのに実行できない、一時的に成功しても持続しないという問題が起こってしまいます。 


差別化を考えるときはこの4つの視点から、内容を検討してみてください。

6:まとめ

 冒頭に紹介したママ系ブランディングに成功した会社も、「自社の強み=差別化要因=ブランディング・メッセージ」は、正しく現状把握した結果見つけた空きポジションを取るために、やるべきことを決めて取り組んだ結果、手に入れたものです。

もし会社の強みを「得意なこと」「できること」から考えていて、「なかなか差別化できない」「考えても競合と似たようなアイデアしか出てこない」「何をやったらよいのか分からない」という方は、今回お伝えした分析フレームワークを使ってみてください。

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