こんにちは
ネクストプラスの戸谷です。
この連載では「中小工務店が自社ブランディングを確立して、行列のできる工務店になる方法」についてお伝えしています。今回はブランディング構築に大きな影響がある「CX」についてお伝えしていきます。ちなみに「CX」という言葉はご存知でしたでしょうか?
CXとはCustomer Experience(カスタマー エクスペリエンス)の略です。
・Customer = 顧客
・Experience = 経験・体験
顧客体験価値と訳されることが多いのですが、商品やサービスのモノとしての価値(機能とか性能など)だけではなく、検討から購入後の体験や利用を通じて体験して得られるあらゆる価値のことを指します。例えば、ホームページが分かりやすい、問合せしやすい、パンフレットがかっこいい、気持ちの良い接客だったといったあらゆる体験を含んでいます。
ではなぜこのCXがブランディングに大きな影響を与えるのか、工務店としてどう取り組めばよいのかを解説していきます。
【目次】
1:なぜCXが注目されているのか
2:CXのポイントとメリット
3:CXの5つの要素
4:工務店におけるCXについて
5:まとめ
【1:なぜCXが注目されているのか】
今の日本は超成熟市場と言われています。欲しいものは何でも手に入るし、品質も良いものが揃っています。つまり「モノ」での差別化が難しくなっています。住宅で言えば素材や住設で差別化するのは難しいということだと思ってください。
そこでよく言われることですが「モノからコト」へのシフトが起きています。つまり建物自体ではなく、おもてなしや接客で差をつけたり、アフターメンテナンスやOBコミュニティといった建物(モノ)以外のサービスや体験(コト)で差をつけようとすることです。
もう一つ重要なのはスマホの登場により顧客の購買心理と行動が変わったことが挙げられます。会社や商品が比較検討しやすいか、欲しい情報がすぐに手に入るか、次にどうすればよいのかがパッと直感的に分かることの価値が上がり続けています。例えばホームページを見ているとき少しでも難しい、分からない、見つからないと感じた時点ですぐに他のサイトに移動してしまいますよね。
つまり従来のマーケティング手法である商品・サービスのメリットを伝えるだけではなく、利用者の行動やその裏側で生じる感情についても配慮して、いかにストレスの少ない体験を提供できるかが求められています。
【2: CXのポイントとメリット】
今の時代はモノだけではなく体験の価値が上がってきていることは伝わったと思います。ではどのような点に配慮すればよいでしょうか。ここではイメージしにくいオンライン上のCXを例に、そのポイントをお伝えします。
まず自分がスマホを使って何かの商品やサービスを比較検討するときをイメージしてください。あなたはどのようなときに離脱(別のサイトに行ってしまう)しますか?
・欲しい情報がどこにあるか分からないとき
・文字ばかりで読むのが大変なとき
・難しい専門用語ばかりで内容が良く分からないとき
・戻りたいページへの戻り方が分からなくなったとき
・問合せ先や次に何をすればよいのか分からないとき
などではないでしょうか。つまり「難しい(と感じる)」「内容が分からない」「どこに必要な情報があるのか分からない」「(文字ばかりで)大変に感じる」といったストレスを感じること自体がNGとなります。
逆に考えると目指すべきは「かんたん」「(内容が)分かりやすい」「(求めている情報が)すぐに見つかる」です。
そしてより良いCXを提供するメリットとして、まず接触回数が増えます。ストレスなくホームページの情報を次々見てもらうことができいます。良い体験を通じて肯定的な印象を持ってもらえると、後日再来してもらえる可能性も高まります。接触回数が増えるとそれだけ問合せを獲得するチャンスも増えることになります。
ほかにもインスタグラムやピンタレストといったSNSでかっこいい写真や共感を得る情報をアップすればいいね!やフォローやシェアしてもらえます。その結果より多くの人の目に触れるチャンスとファンが増えていきます。
【3: CXの5つの要素】
CXという言葉は1999年にアメリカの経営学者が提唱したのが始まりと言われています。その時にCXは5つの要素に分けて説明されました。
<1:SENSE>
感覚的な経験の価値。見た目やBGM、香りや肌触りなど五感を通じた体験したときに生まれる価値のことです。工務店やリフォーム店だとショールームや事務所のディスプレイやBGM、サンプルなどが該当します。
<2:FEEL>
情緒的な経験の価値。商品自体ではなく不随したサービスを受けて感じる感情のことです。おもてなしや気持ちの良い接客などが当てはまります。
<3:THINK>
創造的な経験の価値。会社や商品のコンセプトや思想に対して感じる肯定的な感情のことを指します。この1~2年、特徴的なコンセプトを前面に打ち出した企画住宅が増えてきた理由の一つでもあります。
<4:ACT>
ライフスタイルに変化を起こすことで生まれる価値。建物はまさにこれですよね。新築住宅は賃貸の住まいでは実現できなかった理想の生活を提供しています。大型リフォーム工事も既存の不満を解消して新しい生活に価値を与える仕事ですよね。
<5:RELATE>
交流を通じて生まれる価値。安心感やチャンスなどコミュニティに居るから得られるメリットはたくさんありますよね。工務店においてはOBコミュニティをつくり感謝祭を開催することでつながりや親しみを提供する。そしてよりファンになってもらい紹介してもらう一連の行動が該当します。
この5つの要素を意識しながら、お客様の体験や感情に響く商品やサービスを提供していくことでCXは向上し、ブランドを強化することができます。
【4:工務店におけるCXについて】
前章でも少し触れましたがここでは顧客が工務店・リフォーム店の情報を知って、来場するときまでのポイントの一部を順番に見ていきましょう。
詳しくは購買心理の変化を紹介した記事(「マーケティング」と「ブランディング」の違いが分かっている工務店が伸びている理由)を読んでもらいたいのですが、スマホの普及した時代の購買心理は
・A:Attention:認知・注意(存在を知って注意をひく)
・I:Interest:興味・関心(興味や関心を持つ)
・S:Search:検索(検索して比較検討する)
・A:Action:行動(行動する)
・S:Share:共有(口コミや投稿する)
という公式で説明できます。この公式は頭文字を取ってAISASと表現されて、読み方はアイサスです。今回はチラシをみて見学会やイベントに来場するまでをAISASの順にみていきましょう。
最初の「A」と「I」はほぼ同じなのでまとめて考えます。顧客はチラシを見て見学会やイベントの存在を知ります。そして興味を持てば手を止めて紙面を見てくれます。
その次は「S:検索」なのですが、これはホームページでより詳しい情報を検索して、他社やほかのイベントと比較することを意味しています。ここで一つ問題が生じます。リアルのチラシからネットのホームページへの移動です。
チラシにはちゃんとQRコードは入っていますか。わざわざURLを入れてくれる親切な人はほぼいません。中には検索キーワードを入力してホームページを見てくれる人もいるかもしれませんが、ピンポイントで見学会やイベントのページに飛べるとは限りません。欲しい情報にすぐにアクセスできることが重要です。
さらに次の「A:行動」は来場を意味します。現地に着いた時には駐車場がしっかり確保されていますか。見つけやすいことはもちろん、駐車のしやすさも重要です。イオンなどのショッピングモールには広めの駐車スペースを設けているところもありますよね。その配慮がお客様の体験に差を生みます。
来場した後も、初対面のあいさつや接客、ドリンクや荷物への配慮など含めてどれだけ快適な空間を提供できていますか。子供の様子が気になると打合せにも集中できなくなるということで、キッズスペースに保育士さんをスタンバイさせている会社もあるくらいです。もちろん打合せ中も言葉だけではなく、資料やサンプルを使って分かりやすく理解する体験を提供することでCXは向上します。細かな配慮のひとつひとつがCXに影響を与えています。
【5:まとめ】
いかがでしたでしょうか。すでに住宅の性能やアフターの仕組みがあるのは当たり前で差別化は難しいのが実情です。ではどこで競合と差をつけて顧客に選んでもらうのか。その答えの一つがCXです。
よい顧客体験は小さな配慮の積み重ねです。ぜひお客様の立場になって、自分たちの提供しているサービスを見直してみてください。