こんにちは
ネクストプラスの戸谷です。
この連載では「中小工務店が自社ブランディングを確立して、行列のできる工務店になる方法」についてお伝えしています。
今回はブランディング構築に大きな影響がある「デザイン」についてお伝えしていきます。具体的には、ブランドとデザインの関係やその目的、そしてブランドをデザインする具体的な方法まで公開していきます。
【目次】
1:[復習] ブランディングについて
2:なぜデザインが重要なのか?
3:工務店のブランディングデザインとは
4:ブランディングデザインのつくり方3STEP
5:まとめ
【1:[復習] ブランディングについて】
今回の記事を読む前に簡単にブランディングについて復習しておきましょう。
ブランディングのもとになる単語に「ブランド(brand)」があります。その語源は「burned」で意味は「焼印を押す」ことです。放牧していた自分の家畜と他の家の家畜を見極めるために焼き印を押したことから生じています。
つまり他の会社、商品、サービスと、自社や自社の商品やサービスとを区別する要素を「ブランド」と呼び、ブランディングはブランド(区別する要素)を認知した消費者に「ある(肯定的な)イメージ」を持ってもらうための一連の行動のことです。
ここで言う「ブランド」を具体的に言うと、ロゴ、ネーミング、パッケージ、商品など消費者がパッと見たり触ったりして、認知できるもののことを指します。
さて、ブランディングをイメージするには、マーケティングと比較するとより分かりやすいかもしれません。マーケティングは会社から働きかける活動で、ブランディングはお客様にイメージしてもらう活動です。
ここではおおよその概念を把握できれば大丈夫です。詳しく確認したい方はこちらの過去記事をお読みください。
https://chikalab.net/articles/244
【2: なぜデザインが重要なのか?】
近年デザインの重要性が高まってきています。その理由をお伝えする前にデザインについての”よくある誤解”を解いておきたいと思います。
デザインというと「美しい・かっこいいビジュアルイメージ」のことだと思っている人が意外に多いのですが、それはデザインの一部でしかありません。「美しい・かっこいい」は主観的な感想です。それは人により異なります。
一方でデザインはある目的を達成するために、狙ったターゲットに、狙った通りの働きかけをして、成果を手に入れるために行うものであり、客観的なものです。
このデザインの重要性が高まった背景には、日本が超成熟市場であることが挙げられます。
超成熟市場とはあらゆる商品やサービスが高いレベルで提供されていることを意味します。つまり欲しいものは何でもそろっているということです。
一昔前の日本は、モノやサービスが揃っていなかったので、つくれば売れる時代がありました。次に機能や性能を求められるようになり、高額化していきました。その後は経済状況もあり低価格化が進みました。
今ではあらゆるターゲットごとに高額なものから低価格なものまで、商品やサービスが細分化されています。だからこそ戦略的に「誰に」「どんなイメージを持ってもらい」「どの商品やサービスを買ってもらうのか」を狙った通りに実現していかなければいけません。
工務店やリフォーム店でよく起きている悲劇は、デザインの良し悪しが社長の好き/嫌いで決まっていることです。個人の好みは一定していません。その時々で変わります。判断基準がブレると、お客様のイメージにもブレが生じて、ブランディングに失敗してしまいます。
では何を基準にデザインの良し悪しを判断すれば、ブランディングが成功するのでしょうか。次の章で解説していきます。
【3: 工務店のブランディングデザイン】
あらゆる商品・サービスが提供されている超成熟市場は工務店やリフォーム店にも当てはまります。もちろん例外はありますが、9割の住宅購入者が考えている建物はどの工務店でも対応することができます。
自然素材や耐震、デザイン住宅や高性能住宅、住宅設備もお金と工期さえあればほとんどの要望は叶えることができます。つまり「住宅」で他社と差別化をすることは難しいのです。もちろんデザインや対応がお粗末な会社もありますが、そのような会社はいずれ退場していくので除きます。
では何で差別化するのか?私は「ブランドコア」と呼んでいるのですが、社長のビジョンや会社の理念といった「目に見えない想い」とその「伝え方」で違いを出していくしかないのです。
性能や機能が良いものをつくればお客様から選ばれる時代は急速に終わりを迎えています。特に若い人、住宅業界で言えば30歳前後のゆとり世代にはこの傾向が顕著に現れます。
まず伝え方から見ていきます。インターネット、特にスマートフォン(スマホ)が普及した2010年代前半から、人々は商品やサービスを比較検討してから購入するようになりました。工務店で言えば購入よりも、見学会への来場や問い合わせの方がイメージしやすいと思います。
つまりスマホの画面でパッと見ていいね!やシェアしたくなるようなビジュアルの重要度が高まり続けています。
次に目に見えない想いについてですが、30歳前後のゆとり世代とそれ以上の世代で重視する/しないが分かれる”ある出来事”が2008年に起きています。それがリーマンショックです。社会に出るか出ないかの時に資本主義の負の側面を目の当たりにして、お金や発展だけがすべてではないという考えが急速に若い世代に浸透しました。
そこで重視されたのが会社の社会的責任(CSRについてはまたの機会に深掘りしたいと思っています)や、経営者の思想やビジョン、企業理念などです。つまり目に見えない想いや、その想いを行動に移しているかを見るようになりました。
まとめると、今の時代に選ばれる会社になるには、ビジョンや経営理念といった「目に見えない想い」を、デザインの力で分かりやすく消費者に伝えることが必須となっています。
これを工務店に置き換えて考えてみると、ビジョンや経営理念をビジュアル化したものが「ロゴデザイン」であり、そこからお客様の目に触れる名刺・封筒・パンフレット・のぼり・現場シート・看板からチラシやホームページまで、一貫した世界観で同じブランドメッセージを発信し続けていくということになります。
【4:ブランディングデザインのつくり方3STEP】
ここからは工務店のブランディングデザインを成功させる方法を、一番シンプルに3つのステップで説明していきます。
■STEP1:現状の把握
いきなりロゴやツール類のデザインを変更するのはやめてください。まず最初にやるべきことは、今の自社のブランド認知がどうなっているかを把握することから始めます。
リブランディングやツールの見直しをするということは、集客や売上が思った通りに行っていない、または将来に危機感を感じているはずです。そのギャップを冷静に見極めて、どのようなブランディング戦略を取っていくかを考えていきます。
本来は調査会社を使ってアンケートやモニター調査をするのがベストですが、費用的にも難しいと思います。手軽に行う方法としてはお客様に聞く、スタッフの家族やその友人に聞く方法があります。
■STEP2:ブランドコアを言語化する
私がブランドコアと呼んでいる、会社の理念やビジョンといった目に見えない想いを、まずは言語化します。最初はキーワードで構いません。大切にしていること、ありたい理想の姿、将来の目標などを書き出していきます。素材が集まったらそれをなるべくシンプルに、分かりやすい言葉で表現していきます。
■STEP3:デザインツールの制作
言語化した目に見えない想いをビジュアル化(視覚化)していきます。繰り返しますが、この時に社長の好き/嫌いで決めてはいけません。お客様にイメージしてもらいたいブランドイメージを想起させるデザインにしなければいけません。
色や形、文字のフォント一つで印象はガラッと変わります。STEP2で言語化した思いをデザイナーと共有して、ブランドデザインを行う目的を達成できるデザインツールをしましょう。
【5:まとめ】
いかがでしたでしょうか。今の時代、特に住宅の一次取得者にあたる30歳前後のゆとり世代より若い人たちは「目に見えない想い」を重視しています。しかし目に見えないままでは選んでもらうことができません。
だからこそブランドデザインの力で、目に見えない想いを視覚化し、知ってもらい選んでもらう必要があります。想いだけでもデザインだけでも足りません。その両方が必要になるわけです。
【追伸】
2020年からもっと気軽にブランドデザインを学んでもらえる勉強会を開催する準備を進めています。
想定している対象者は、経営者はもちろんスタッフの方にもぜひ参加してもらえるようにしようと考えています。
実際に経営者は忙しくてツールの内容やデザインまでチェックすることは難しいケースが多いのと「自分しかできない」と思って仕事を抱え込んで苦しんでいる姿をみているので、その状況をどうにかしたいと思っています。
来月の記事を公開するときには詳細をご紹介できると思います。ぜひ楽しみにしていてください。