〇住宅性能の重要性
2000年に住宅品確法が施行されてから四半世紀が経過しようとしています。2000年代までは住宅性能関連の普及があまり進みませんでしたが、ヒートショックが人体への悪影響となることが実証され、大災害によって、いかに住宅性能が重要かを知ることとなりました。2024年は正月に能登半島地震が発生、先日宮崎県沖でM7.1の地震が発生し、いよいよ南海トラフ地震に対する脅威が増大していると感じています。
被災された皆様にはこの場をお借りして、あらためまして心よりお見舞いを申し上げます。
このようなことから、家づくりに携わる皆さまは非常に重要なお仕事をしておられることはもちろん認識しておられると思いますし、耐震性能・断熱性能をはじめとする住宅性能の充実に対して、使命感を持って家づくりにあたっておられるのではないでしょうか。そして地域の家づくりを担う地域工務店において、住宅性能に関する対応は待ったなしです。これまである程度緩和措置が講じられていた法令規制も厳格化が進みました。長期優良住宅・住宅性能評価などは当たり前のこととなり、2025年の建築基準法改正による4号特例の縮小などが予定されています。今後発生可能性が高まっている災害に対して命を守る家づくりでもあり、施工品質を維持向上していく意識がさらに高まっておられると思います。
このような状況下、我々工務店としてはどのようなことを大切にした家づくりが求められているのでしょうか。
POINT① 設計工程を考えた家づくり
長期優良住宅などの様々な制度が創設される前と比較して、住宅設計の工数は増えています。詳細図などを作成せずに請負契約をし、現場打合せでおさまりを決め施工をしていた時代は終わり、詳細図面をしっかり作図してから着工することがスタンダードになっています。これらは本来各種法令規制に対応するために必須であり、前述のように住宅性能が重要視されている時代には当然のことといえます。しかし一方で設計工程が長期化し、相応の知識とノウハウが必要になったことで工務店経営にも影響を与えていることは否めません。必要なリソースが不足している場合、請負契約から着工・完工までの日数が長期化してしまっているケースも見受けられるようになりました。
住み心地の良い家づくり、災害に強い家づくりをするために住宅性能強化は当然のことですので、工務店にとっては時代の要求に対応できる体制づくり、特に設計工程の長期化に備えることや確実な性能確保のための経営力アップが必要です。地域の家づくりを守っていく立場としてはこの性能を確保することと同時に自社の経営がしっかり立ち行くために、まずは設計工程を考えた業務遂行が求められています。
具体的には図面確定から詳細図面作成・構造計算のスケジュールや確認申請・長期優良住宅・性能評価などの申請業務などをどのような工程で進めていくか、ということになります。設計業務への負担が大きくなっていることを前提にお客様との打ち合わせを行いしっかり説明をしながら進めること、また設計工程から着工~完工までの全工程を予定通りに進めていくための社内連携も求められています。経営面において、営業工程・設計工程・工事工程の管理と健全な形での業務遂行が高い品質の家づくりにもつながり、地域からの信頼も得られることになります。逆に工程がずれる、変更や修正が繰り返される、となると経営にも悪影響を与えます。お客様満足の低下、スタッフ・職人の士気低下、収益性の低下などから、最終的には地域の家づくりを担う立場として信用のない状態となってしまう可能性すらあるのです。
段取りの良い家づくりが好循環を生むことはいま始まったことではありませんが、災害に備える・法令規制に対応する・お客様からの信頼を獲得する、という点から(特に設計工程を)さらに重視して進めていく必要がある、と考えています。
POINT② アフターメンテナンスを厚く
品質の高い家づくりを行い、お引渡しを行った後のアフターメンテナンス(=家守り)も、工務店にとっては非常に重要な仕事です。建築時に良質な家づくりをしたら、今度はお施主様との良好な関係性とともに、その住宅を良い状態で維持をしていく必要があります。制度としても長期優良住宅は、施主様とともに長期にわたって良質な住宅を維持していくためのものです。地域の工務店がどこまでアフターメンテナンスを充実させるかは、企業姿勢を表すなかで最も明確なものです。
具体的にはアフターメンテナンス専任担当者を複数名スタンバイさせて、定期点検も含めお客様をお待たせしない体制が良いと考えます。アフターメンテナンスに関しては連絡経路も電話だけではなくLINEなどのツールも活用すること。またお施主様ご自身でできるメンテナンス方法については動画を準備して啓もうしていくことも大変重要です。そして万が一災害が発生した際に会社としてどのように動くのかも事前に取り決めておく必要があると思います。
〇地域から信頼を得られる体制づくりのために
考えてみれば、上記2つのポイントはどの時代でも地域の工務店にとって大切なことです。もちろん、ほかにもマーケティングやブランディング、組織づくりや仕組化といったテーマも同様に重要ですし、経営を俯瞰して長期的にみると全体的なレベルアップが必要です。ただこれらを確実に実現するためには相応のリソースが必要となりますので、リソースが限られる中小工務店としては焦点を絞って進めていくのも一つの策だと思います。
しかし、上記2つのポイントに絞るとしても、設計やアフターメンテナンスに関する人の採用と育成、そしてしっかり雇用を守りお施主様を守るための収益性を確保することが必要です。住宅着工棟数が減少するなか、競争も激化している中でも、お施主様や社員を守るためには企業に一定の収益性が求められるのです。
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