vol.02 ホールダウンアンカーボルトに必要な埋込み長さが確保されている

2019/09/0213:3938988人が見ました

チェックタイミング ~後戻りのできない「10工程」~

チェック項目

今回のピックアップ項目は、「ホールダウンアンカーボルトに必要な埋込み長さが確保されている」です。

現場品質コンサルタントの目

ホールダウンアンカーボルト(以下、HDアンカーボルト)の埋め込み長さが不足している現場を見受けます。うっかりミスもあるのですが、現場で作業されている職人さんがHDアンカーボルトに必要な埋め込み長さが決められていることを知らない、短期許容引張耐力(以下、引張耐力)によって埋め込み長さが違うことを知らないという知識不足が原因であることがあります。それに加え木造住宅の現場監督の中には基礎工事(コンクリート工事)を不得手とし、全部業者まかせにしてしまうケースも少なくありません。そういう背景もあるため、不備がよく見つかる部位でもあります。

施工不備によるリスク

ホールダウン金物は、木造軸組工法の住宅に外力(地震や台風等)がかかった際、柱が土台や梁等から抜けるのを防ぎ建物の倒壊や損傷を防ぐために取り付けるもので、阪神・淡路大震災を教訓に建設省告示1460号で定められています。HDアンカーボルトを埋め込む長さ(正確にはコンクリートと付着する面積)は引張耐力と密接に関係しており、埋め込み長さが不足していると抜けてしまう恐れがあります。建物の倒壊や「人の命」に関わるため、重要な部分となります。

解説

■埋込長さの検討
引張耐力に対して必要なHDアンカーボルトの埋込長さの検討を行わなければなりません。木造住宅工事仕様書(フラット35)では引張耐力が「25kN以下の場合は埋め込み長さ360㎜以上」、「25kNを超え35.5kN以下の場合の埋め込み長さは510㎜以上」(M16の場合)と表記されており、この値を満たしていれば埋込長さの検討を省略することができますが、詳細な検討をする場合はHDアンカーボルトの表面積と付着許容応力度の計算から算出します。

※埋込長さの詳細な検討をされる場合は、木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2008年度版)をご参照ください。
※同等以上の性能が確認できる製品を使う場合はこの限りではありません。

■底盤打設前の設置が必要か確認
基礎天端の高さGL+400㎜及び底盤高さGL+50㎜で設計した場合には、底盤打設後にHDアンカーボルトを取り付けると埋め込み長さが不足する恐れがあります
(底盤打設後の立上り高さ) 400㎜-50㎜= 350㎜ < 360㎜ (埋め込み長さ)

底盤のコンクリートを打設する前に確実に設置するか、又は埋込み長さが350㎜以内でも引張耐力を確保できる製品を選択することが必要です。

■HDアンカーボルトのかぶり厚さ
建築基準法には、HDアンカーボルトのかぶり厚さの規定はありませんが、地震や台風などで大きな力が加わったりすると、かぶり厚さが薄い部位で基礎がひび割れするケースがあります。優良な現場では引抜耐力の低下を防止するため、鉄筋と同じくかぶり厚さを確保するようにしています。

 

優良ビルダーでは自社で品質基準を定め、コンクリート打設前に現場確認を行っています

■後設置は基本認められていない
HDアンカーボルトの「設置位置を間違える」「設置を忘れる」などのミスがあっても、後から設置(ケミカルアンカー等による取り付け)することは基本認められていません。「後戻りできない工程」を意識しながら底盤のコンクリート打設前、立上りコンクリートの打設前の確認は必ず行うようにしましょう。

 

 

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