こんにちは
ネクストプラスの戸谷です。
この連載では「中小工務店が自社ブランディングを確立して、行列のできる工務店になる方法」についてお伝えしています。
さっそくですが今年2020年のお正月に話題になった西武そごう社の「さ、ひっくり返そう」元旦新聞全面広告。もちろん面白いという声が大きかったのですが、一部では「集客にはつながらない」「広告の目的とは?」といった論争が起こりました。この話は広告におけるブランディングとマーケティングの考え方の違いにも通じるところです。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000497.000031382.html
そこで今回はブランドづくりのための「ブランド広告」と、集客のための「レスポンス広告」(ダイレクトレスポンス広告とも言われることもあります)の違いを理解することと、今後の広告戦略についてのポイントを考えていきます。
【目次】
1:広告とは
2:レスポンス広告とは
3:ブランド広告とは
4:まとめ
【1:広告とは】
本連載でも初めて出てきた「広告」という言葉。まずはその意味を整理しておきましょう。
ウィキペディアによると広告とは…
非人的メッセージの中に明示された広告主が所定の人々を対象にし、広告目的を達成するために行なう商品・サービスさらにはアイデア(考え方、方針、意見などを意味する)についての情報伝播活動であり、その情報は広告主の管理可能な広告媒体を通じて広告市場に流されるものである。
とされています。工務店における主な「広告媒体」とはチラシやDM、看板や雑誌でしたが他の業界と同様に、最近ではネット広告の比重が高まってきています。
実はこの後にある文章が続きます。それが…
広告には企業の広告目的の遂行はもとより、消費者または利用者の満足化、新しいモノや考え方・アイデアとの出会い、さらには社会的・経済的福祉の増大化などの機能をも伴うことになる。
つまり広告には(一般的に広告と言われて思い浮かべる)集客の面だけではなく、「顧客満足度」「啓蒙活動」「市場の開拓」などの目的もあります。
前者の集客を目的とした(一般的に思い浮かべやすい)広告のことを「レスポンス広告」、後者の広告を「ブランド広告」(イメージ広告とも呼ばれます)と考えてください。ちなみに冒頭にあげた西武そごう社の広告は後者のブランド広告になります。
これまでは一般的に
・お金になる広告 = レスポンス広告
・お金にならない広告 = ブランド広告
と言われてきましたが、近年その流れも変わってきています。
【2:レスポンス広告とは】
レスポンス広告とは「その場で行動(反応)を促すための広告」です。工務店で言えば…
・集客チラシ:完成見学会やイベントに来場してもらう
・反響チラシ:リフォーム工事の問い合わせをもらう
をイメージしてください。
一般的に情報量(文字数)が多く、具体的にとって欲しい行動(来場や問い合わせ)が明示されているのが特徴です。行動してもらうには大きく2つの戦略があります。一つが「痛み」を刺激する、もう一つが「快楽」の提供です。
痛みとは「損をする」「危険がある」といったデメリットや恐怖心のことだと思ってください。2000年代に流行った新聞紙面のようなデザインで「○○から買ってはいけません」といったような強いメッセージを打ち出す折込チラシをイメージしてください。
快楽とは「学べる」「体験できる」「○○が手に入る」「特典がもらえる」のようなメリットやプレゼントのことだと思っておいてください。もう少し踏み込んで価値提供(ベネフィット)といった表現をする人もいます。
■ターゲット
ターゲットは顕在顧客になります。すでに新築やリフォームに興味関心がある人(一部広告をきっかけに明確に意識した人)のことです。
■構成案
今はインターネットとスマートフォン(スマホ)の普及で情報が爆発的に増えています。さらに仕事、子育て、介護以外にも、YouTube、スマホゲーム、SNSなどいくら時間があっても足りない生活スタイルになってきています。
そんな時に、パッと目にしたチラシやSNSの投稿に手を止めてもらい、読み進めてもらい、行動してもらうことの難易度は上がり続けています。さらに忙しさ以外にもSNSのようにパッと一瞬で好き嫌いを判断するメディアになれているので「分かりやすさ」の重要度が増し続けています。
ではどのような点に注意すればよいのでしょうか?体験会チラシを例に「お客様の心の動き」からレスポンス広告の基本的な構成要素をお伝えします。
1:「おっ」と手を止めさせる
直接ゴミ箱行きになる大半のチラシの中から、まずは手に取ってみてもらう必要があります。そのためにはキャッチコピーも大切ですが、デザインも重要です。
レスポンス広告は顕在顧客向けでしたよね。住宅購入を考え始めた人や気になっているが一目見て見学会のチラシだと、パッと分かる必要があります。
2:「へー」と興味関心を引く
いくら顕在顧客とはいえ、興味がなければ貴重な時間を投資することはありません。そこで見出し部分でどんなメリットがあるのか、何を体験できるのか、どんな特徴があるのかを示す必要があります。
3:「なるほど」と納得してもらう
『人は感情で行動し、理屈で納得する』という金言があります。チラシを読むという行動を起こしている人に、次に提供するべきことは「チラシを読み続け、見学会に行くことに納得してもらう」ことです。
どんな建物なのか、なぜ今参加するべきなのか、実際に体験することで得られるメリットなどを紙面が許す限り伝えていきます。主に裏面の内容ですね。
4:「でも…」という行動しない理由を潰す
ここまでチラシを読み進めた人は、見学会に参加した方が良いことは理解しています。しかしせっかくの休みに子供や親を連れて出かけるのは結構面倒ですよね。それにやるべきことは他にもたくさんあります。
すると「行かない自分を正当化する理由」を探しはじめます。完成見学会なら、
・子供がぐずったり、汚したらどうしよう
・トイレは借りられるのかな?
・駐車場が狭かったら嫌だな、迷わず行けるかな?
などです。その言い訳を潰しておく必要があります。
5:「どうすればいいの」ということで具体的な行動を示す
最後に見学会に参加することを決めた人に、どうしたらよいかを伝えます。私たちは当たり前でも、初めて見学会に参加する人は「当日に直接会場に行ってよいのだろうか?予約した方がいいのかな?」「何か条件があったりするんだろうか?」など、思わぬところで不安を感じたりします。そこで当たり前のことでもお客様に取ってもらいたい行動を具体的に示す必要があります。
繰り返しになりますが「レスポンス広告」は行動(来場や反響)を促すための広告です。使い方はもちろん、制作物や情報が目的に合っているかを常に見直してください。
【3:ブランド広告とは】
ブランド広告の目的は「消費者に企業や商品に対する肯定的なイメージを持ってもらう」ことです。レスポンス広告には必須な「とってもらいたい行動」はありません。ブランド広告から直接的に来場や反響獲得はありません。
例に挙げたそごう西武社は17年から「わたしは、私」というブランド広告を展開しています。しかし19年の元旦には女性がパイ投げを受けている広告で大炎上しています。さらに百貨店の苦戦が報じられるなか、店舗の閉鎖も発表されています。そのような背景があったうえで20年元旦に発表したブランド広告のメッセージが「さ、ひっくり返そう」になっています。
とはいえ、この広告を見たからといってそごうや西武百貨店で買い物しようとは思わないですよね。ここが「ブランド広告はお金にならない広告」と言われる理由です。
しかしながら時代は変わり始めています。特に今の20代~30代のゆとり世代は性能や利便性よりも、企業理念や商品コンセプトをより重要視しはじめています。
またレスポンス広告はその場の反響を目的としています。ある意味使い捨てであり、SNSの投稿のように蓄積しません。一方でブランド広告は浸透するまで時間はかかりますが、継続することで確実に消費者に「あるイメージ」を与えます。これこそまさにブランディングであり、ブランド広告が目指すところです。
【4:まとめ】
今回は「お金になる広告 = レスポンス広告」と「お金にならない広告 = ブランド広告」を見てきました。
一見前者に集中すればよいかのように感じますが、それはリスクが高い選択です。差別化することが難しく、蓄積されない広告であり、今は結果が出ていてもあるときから反応が取れなくなる可能性もあります。
成果が出るまで時間がかかり、数字が見えないブランド広告は我慢が必要です。しかし本連載で繰り返しお伝えしている通りこれからの時代に反響を獲得し、効率よく値引きをすることなく新築やリフォーム工事を受注するには、ブランドは欠かせません。
ではどうすればよいのか。
会社の状況やステージによって戦略は変わってきます。レスポンス広告でありながらブランド広告の目的も果たす方法もあります。ぜひ自社の合った広告戦略を見つけ出してください。
[追伸]
見学会チラシのつくり方については、今春に「見学会チラシをパワーポイントでつくれるようになる講座【入門編】」の開催を予定しています。
詳細が決まりましたら本連載でもご案内いたします。