No.7では熱放射(電磁波)の有用性の話をしました。太陽光や放射式暖房の熱放射うまく活用するためには「蓄熱体」が必須です。質量があり熱を吸収し放出するマテリアルです。代表的なものに木や土やレンガやコンクリートなどがあります。
ここ30年あまりの省エネ建築においてはしかし、「断熱性能(=U値)」を主要な基準とした建物の建設が推奨されてきました。各国の建物エネルギー証書においては、蓄熱性能も計算には入れられているものの「蓄熱に関して大雑把な計算で十分考慮されていない」「断熱に偏重した評価」など、建築物理の複数の専門家から批判や指摘があります。
断熱性能の評価基準であるU値は、室内外の温度差があるときの熱の通りにくさ(もしくは通りやすさ)を表しています。
蓄熱体は、熱を蓄え放出し、室内の温度変化を緩和します。
断熱体は熱を「断じる」、蓄熱体は熱を調整する「調熱」機能があります。どちらも省エネにつながりますが、人間の健康面、湿度管理の調湿機能、防臭機能、除菌機能などの観点では、伝統的な蓄熱マテリアルである木や土やレンガや石などが明らかに優位です。
省エネ=断熱になっていますが、どういう断熱をするかで、エネルギー的にも人間の健康面でも、大きな違いが生まれます。蓄熱・調湿性能の高い断熱で、放射熱を有効に活用することが、私は最適なソリューションだと経験的に確信しています。
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