耐震性能、おかしな比較をしていませんか?
住宅の設計で、建築士はおかしな比較を当たり前のようにしています。
■耐震性能VSコスト(建築費用)
「耐震性能を上げるとコストアップになる」
→耐震性能を取るか、コストを取るか→コストを考え、耐震性能は低めにした
■耐震性能VS間取り
「耐震性能を上げると間取りの自由度が低くなる」
→耐震性能を取るか、間取りを取るか→間取りの自由度を考え、耐震性能は低めにした
こんな話をよく聞きます。
え、何がおかしいの?コストも間取りも重要でしょう!
と思いますよね。当然重要です。しかし、コストや間取りを重視することで耐震性能を下げるべきものではないということです。
耐震性能は標準性能と思うこと
耐震性能は耐震等級3(建築基準法で求めている耐震性能の1.5倍の耐震性能)と決めたら、そこを確保したまま、コストに合わせた住宅を設計するべきです。
例えば、あなた(お客様)の要望と予算に合わせた住宅を設計すると耐震性能は低くなりました。こんなことはあり得ません。 車に例えるなら、「車の費用を抑えるために、エアバッグは少なめにしよう」という考え方と同じです。安全性を犠牲にしたコストダウンはありません。
間取りの自由度も同様です。これも例えると、「車内空間を広くしてのびのびと車に乗ってもらう為に、ボディはできるだけ薄く作ろう」という考えと同じです。安全性を犠牲にした広がりのある空間はあり得ません。
まずは、耐震性能は何とも比較するべきものではないということを忘れないようにしてください。
建築士が考える数量と時間、お客様の考える数量と時間の違いを意識する
どういう意味かというと、木造住宅を設計する建築士は年間数10棟の住宅を設計する場合、その住宅を年間の数十分の1棟です。そして設計期間、施工期間は数か月から長くても1年程度。だから、耐震性能についても目先のコスト、間取りと比較してしまいます。
しかし、お客様にとったらその住宅は、一生に一棟、そして一生住む住宅です。その長期スパンで物事を考えれば、目先のことで耐震性能を比較するべきではありません。
建築士は、つねに自分がその住宅に住むことをイメージして設計する必要があると思っています。そのような想像力が大切だと思います。
これは、建築士だけに言えることではありません。住宅建築に関わる全業者が、同様の意識を持つことが大切です。
全ての住宅は、お客様にとって、一生住む大切な一棟です。