M's構造設計・構造塾の佐藤実です。チカラボ版「構造塾」の第8回です。今回説明するのは木造住宅の構造安全性確認方法についてです。皆さん、ぱっと思い浮かぶ方法はいくつあるでしょうか? また、その具体的なプロセス、何を確認すべきかを説明できますか?
構造安全性確認の方法の大枠は?
はじめに、木造住宅の構造安全性確認方法には、図のように3通りの方法があります。
■構造計算(許容応力度計算)
建築基準法に規定されている許容応力度計算は、木造で階数3階建てや延床面積500㎡超の建物の構造安全性を確認するために行う計算方法です。
安全性能は3通りの計算のなかで最も高くなります。
■性能表示制度/耐震等級設計
品確法に規定されている性能表示制度の耐震等級設計は、性能表示住宅や長期優良住宅の安全性確認方法となります。
耐震等級設計では、建築基準法で求めているものと同等の耐震性能を「耐震等級1」、その耐震性能の1.25倍の耐震性能を「耐震等級2」、さらに1.5倍の耐震性能を「耐震等級3」と定めています。
■仕様規定
建築基準法に規定されている仕様規定とは、木造住宅が必ず行わなければいけない構造安全性の確認方法です。「壁量計算」、壁の配置バランス「四分割法」、耐力壁両端柱の柱頭・柱脚の接合方法「N値計算」の簡易計算のほか、仕様ルールがあります。
四号建築物は、必ず仕様規定の簡易計算と仕様ルールのチェックを行います。
もちろん四号建築物の場合でも、仕様規定だけではなく、性能表示制度/耐震等級設計や構造計算(許容応力度計算)を行って全く問題ありません。というよりも、ぜひ構造計算を行ってほしいところです。
あえて言及しますが「構造計算は木造三階建てで行うもの」という思い込みは捨てましょう!
木造二階建ての四号建築物でも構造計算を行ってください。
「構造安全性」確認のための項目を確認しよう
次は、構造安全性確認の中身についてです。
図のように大きく分けて、3つの項目で検討を行っています。
■壁量計算等
壁量の計算、壁の配置バランス、柱頭柱脚の接合、水平構面など、主に水平力(地震力・風圧力)に対する安全性確認を行います。
■部材の検討
木造住宅の骨組みである柱や梁の断面算定などを行います。
■地盤・基礎の検討
上部構造を支える基礎と地盤の検討を行います。
構造安全性確認方法と項目の一覧
最後に、構造安全性の3種類の確認方法と、その中身である検討項目についてを一覧にしてみました。
構造計算(許容応力度計算)と性能表示制度/耐震等級設計は、壁、部材、地盤・基礎と全て一通りの計算、検討を行います。
しかし、仕様規定は耐力壁に関する計算、検討は行いますが、部材、地盤・基礎に関しては仕様ルールの確認のみで、計算、検討は行っていません。
仕様規定は木造住宅全体の構造安全性確認ができていないということを認識してください。
柱や梁の部材、基礎・地盤については別途、構造安全性確認を行うようにしてください。
いかがでしたでしょうか。なかなか、すべてきっちりと答えられる方は多くないかもしれません。それは木造2階建ての構造安全性(の確認方法)への理解が不十分であったり、誤解があったりすることも要因です。これまでのこの構造塾を読み進めていただければ、それではいけない理由がご自身でも説明できるようになっていると思います。
ぜひ、今回のテーマへの理解を深めてほしいと思います。それではまた次回。