こんにちは。
ネクストプラスの戸谷です。
この連載では「中小工務店が自社ブランディングを確立して、行列のできる工務店になる方法」についてお伝えしています。
あまり意識せず使っている「ブランド」という言葉ですが、目に見えない概念的なものなので、なかなかイメージしにくいと思います。そこで今回は「ブランド」をもう少し細かく分解して考えることで、理解を深めて活用できるようにしていきたいと思います。
本記事では『パワー・ブランドの本質』(ダイヤモンド社)で紹介されている「米国型」と「欧州型」のブランドの違いをもとに、深堀していきます。
【目次】
1:米国型ブランドとは?
2:欧州型ブランドとは?
3:どちら選択すべきなのか?
1:米国型ブランドとは?
米国型のブランドの特徴は、商品の価値や効率を前面に打ち出すところにあります。
具体的には、提供している商品自体の性能やデザインや安さをアピールします。キーワードは「大・同・新」。
大:シェア拡大を重視。大きいことは良いこと
同:売れている商品をまねた企画をして、代わりばえのしない売れ筋の(外さない)新商品をつくり続ける
新:コンセプトやネーミングやデザインの刷新を繰り返して、常に新規性を打ち出す
この背景には消費者の志向も影響しています。日本人は大手信仰が強いですよね。あなたも根拠はないけど「大手だから安心」だと思っていませんか?例えば食料品。数十円の違いなら、名前も知らないメーカーのモノよりも、CMで見聞きしている大手メーカーの商品を買ってしまう心理だと思ってください。
他にも日本人は新しいもの好きの国民性があると言われています。その理由は諸説あるのですが、その一部を紹介すると、
・日本の文化や風習に大きな影響を与えている神道の教えのなかに「祓」(はらえ)という概念がある。神様を迎えるためには穢れ(けがれ)を洗浄しなければいけない。伊勢神宮が20年に一度新しい神殿をつくる式年遷宮は1300年前から続いている。
・卑弥呼の時代から中国大陸からの文化や宗教を崇め奉り、取り入れてきた。鎖国の時代や明治維新や戦後の復興が成された背景には、国外の新しい文化を受け入れる特性があった。
・江戸時代から江戸っ子たちはとにかく新しいもの好きだった
日本人は保守的で変化を嫌うと言われていますが、根底には新しいもの好きの血が流れているのかもしれません。
この「大・同・新」は戦後の奇跡的な経済成長の時代にぴったりな戦略でした。大企業がつくった、みんなが使っている、新しい商品を持っていることがステータスである。この考え方は戦後から1990年代はじめのバブル崩壊まで続いた、強烈な成功体験とも結びついています。
ジャパン・アズ・ナンバーワンという言葉があったように、「ナンバーワン」志向ともいえる考え方です。
2:欧州型ブランドとは?
欧州では企業の理念や歴史、地域や伝統がブランドと結びついています。大切なのは商品とブランドが別だということです。
たとえばフェラーリ。(一般的に)故障しやすく維持費にも莫大な費用がかかります。でもオーナーたちは故障したことをちょっと誇らしげに、嬉しそうに語るそうです。決して会社にクレームを入れたりはしません。
ワインも、産地自体がブランドになっています。さらに歴史があるワイナリーの、特定の年のワインに価値があるわけです。つまり新しければよいわけでなく、古いものでもそこに歴史や思想があれば、ステータスも価値も高まるわけです。
キーワードは「小・異・義」です。
小:規模が大きいこと自体には価値がない
異:人とは異なる、自分だけのこだわりの追求を求める
義:(商品の性能価値よりも)会社の文化や歴史や姿勢を問う
そして重要視されるポイントが「一貫性」とされています。一貫性は信頼につながります。大企業がつくったものだから信頼するというよりも、老舗企業が昔ながらの伝統を守りつくり続けているものを信頼するという考えだと思ってください。
別の表現をすると(米国型のナンバーワンではなく)「オンリーワン」志向ともいえます。また前章とは矛盾する気もしますが、日本人は新しいもの好きにもかかわらず、
・日本の皇室は世界最古の王朝としてギネス世界記録に認定されている
・世界最古の企業は578年創業の金剛組(大阪の建築会社)
・創業200年以上の企業数は3,146社あり、全世界合計の5,586社の56%を占めている(創業1000年以上の企業も7社)
と世界的に見ても伝統を守り続けることに価値を感じる土壌はあると思っています。
3:どちらを選ぶべきなのか?
では「米国型」と「欧州型」のどちらを選べばよいのか?
2つの軸で検討する必要があると考えています。一つがメガトレンド。もう一つが自社の状況です。
メガトレンド的に考えると、これからの日本は「欧州型」のブランドにシフトしていくと思います。理由は2つあります。
1.物質的な豊かさを求める時代(戦後~バブル期)は「米国型」の「大・同・新」と相性が良かった。しかしすでに日本は人口減少フェーズであり、特に若い世代は本格的にモノよりコトにシフトしつつある。つまり「米国型」が通用しにくいと考えています。
2.インターネットの普及とIT化により、個人の好みは細分化されていきました。さらにテクノロジーの進歩で個別に最適な提案を低コストで提供できる世の中が当たり前になると考えています。
もう一つの理由である自社の状況についてですが、すでにある程度のブランディングができている工務店は「欧州型」にシフトしていくべきです。商品(建物)ではなく会社自体を差別化することでオンリーワンのブランディングを手に入れる戦略をとることをお勧めします。
一方で会社の歴史が浅い、まだブランディングまで手が回らず売上を追いかけている段階であれば「米国型」ブランドの戦略から始めるべきです。特徴的で分かりやすく、競争力のある商品を打ち出すことで、とにかく認知と売上を上げることに注力する。「欧州型」に取り組むのはそれからでも遅くはありません。
今回の記事は決して「米国型」が古くて「欧米型」が優れていると主張しているわけではありません。ここは間違えないでください。
違いを知り、いま自社が取り組むべき最適なブランディング戦略は何なのかを検討するためのヒントになれば幸いです。
■追伸■
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