四号特例を考えてみる②

2020/10/2916:45675人が見ました

 M's構造設計・構造塾の佐藤実です。チカラボ版「構造塾」の第10回です。今回は前回に引き続き、木造住宅の四号特例について考えてみたいと思います。(前回「四号特例を考えてみる」はこちら

 皆さんもぜひ考えてみてください。

 

四号特例廃止(見送り)をどう考えるのか

 前回のつづきになりますが、四号特例廃止が見送られた理由として、

「多くの建築士が特例廃止に対応できず、木造住宅の着工戸数が激減する」というものがありました。

 そうなんです、仕様規定にある壁量計算をできない建築士が多く存在しているのです。四号特例の廃止が見送られたことで、それがわかったのです。

 であれば、壁量計算すらできない建築士を守るのではなく、一刻も早く四号特例を廃止して、壁量計算できない建築士にも強制的に壁量計算をさせないと! できないのであれば、木造住宅の耐震性能を確認できないのですから、人の命を預ける木造住宅の設計をさせてはいけません!

 このように当時は、四号特例廃止を見送った国土交通省に怒りを覚えていました。

 

 すべての建築士が仕様規定を順守するのは不可能

 しかし、よく考えてみたら、国土交通省に怒りをぶつけること自体おかしなことだと気が付きました。なぜなら、四号特例を勘違いして壁量計算もせず、木造住宅を建築しているのは、ダメな建築士だからです。建築士の資質の問題なのです。

 四号特例は建築士を信じて規制を緩和したもの。その緩和措置を誤解し、都合よく解釈して耐震性能不足、あるいは耐震性能の不明確な木造住宅を建築し続けているのは建築士の責任なのです。

 例えるならば、自動車が普及し、運転者の運転技術が向上したので道路の制限速度を上げたのに、運転者が安全運転せずに事故が多発。事故を起こしたのは制限速度を上げたからだ!と、責任転嫁しているのと同じです。

  しかし残念ながら、すべての建築士が四号特例の意味を理解し仕様規定を順守することは不可能です。それほど建築士の資質は低下しています。

 そんな建築士の仕事はなくなる。そんな建築士は淘汰される。など言われますが、そんな建築士でも仕事をし続け淘汰されません。結局、お客様が被害者となります。

 なので、四号特例を廃止して強制的に仕様規定を守らせないといけない状況にまで来ています。残念なことですが……。

 

いまは耐震性能の高い木造住宅を増やすしかない 

 今できることは、意識の高い建築士が、耐震性能の高い木造住宅を一棟でも多く建築していくことだと思います。

 僕は、「構造塾」や講習会、セミナーを通じて耐震性能の重要性を訴え続けます。

  国民の生命、健康、財産の保護を図ることのできる木造住宅が増えていくことを願って!

 

一覧へ戻る