逆転の世界。
新型コロナによるパンデミックで世界がひっくり返った令和2年度も気がつけば残り1ヶ月を切りました。以前から令和はVUCA(不安定、不透明、曖昧、複雑)な時代になると多くの方が予言?というか示唆されていたので、少々の事では驚く事はないと思っていましたが、緊急事態宣言の発出や江戸時代に戻ったかの様な実質の鎖国状態に陥ったのには流石にいったいこの世の中はどうなってしまうのか?と拠り所を見失いそうになりました。それも一旦は収まりかけて、GO TOキャンペーン、Go TO イートキャンペーンなど経済の立て直しに光が見え始めたと思った矢先の第3波の襲来、やっぱり先行きはVUCAなのだと感じています。そんな今までの常識が通じない、否が応でも誰もが思考の転換を余儀なくされて価値観がひっくり返ってしまった今の時代、いたるところでパラダイムシフトが起こっていると感じています。
思考は現実化しない!
天地がひっくり返る位の意識の転換のことをパラダイムシフトと言います。スティーブン・R・コヴィー博士の「7つの習慣」に紹介されている貴婦人に見える絵が実は老婆を描いた絵であるというのは有名で、見方や解釈で世界は全く違う事実になると言われます。実は最近私にもそのパラダイムシフトが起きました。それはリーダー研修などに行かれる方の中では超有名な芳村思風先生の感性論哲学に書かれてある「考えるな、感じろ」と言う言葉の意味がようやく腹の底から理解できたことです。「人間は考える葦である」とのプラトンの有名な言葉にあるように、私は考えるからこそ人間だと思い込んでいた節があり、また、ナポレオン・ヒルの「思考は現実化する」と言う有名な成功哲学を信じ込んで来ました。ただ、ぼんやり考えているだけで何でも思い通りになるとは思っておらず、思考→行動→習慣のプロセスを踏めば、大抵のことは達成するのが原理原則だと思っていたし、長年その実践に努めて来ました。しかし、考える事を否定する感性論哲学によると、思考は現実化しないのです。
男子に二言無し。じゃない。
自分自身の信条に基づいて思考から行動に踏み込み、習慣化によって実力をつけるプロセスを守るか否かはさておき、私に限らず経営者や事業所を率いるリーダーともなれば、自分が行動するだけで良いわけは無く、スタッフや協力業者、職人さんに事業計画で目指す理想を伝えて、その方向に向かって共に動いてもらわなければなりません。また、私が一般社団法人職人起業塾で行っている研修事業は企業から職人等の現場実務者の従業員を預かって、原理原則論を中心に理論を教え込みますが、これも実際の業務に反映されなければ全く意味も価値もありません。要は人を動かす事が非常に重要というか、それ自体が事業だと言っても過言ではありません。そして、これまで私が他者を動かすのにとってきた手法は理論構築であり、ロジカルに理詰めで追い込んで行き、最後には「やります。」と言わざるを得ない状況を作る事です。それは、自分が子供の頃から、「男子に二言無し」とか「吐いた唾は飲まない」と言った昭和真っ只中の価値観にどっぷりとハマり、それが前提条件として誰にでも成り立っているものだとばかり思い込んでいたからに他なりません。
言葉と裏腹は珍しくない。
しかし、実際に人は「やる。」と言ったからやる訳ではないし「分かりました。」と言ったから心底納得した訳でもないのは誰もが知っているところだと思います。結局、やるはずの事をやらない、進むはずの事が進まないなんて事が数多く起こります。特に技術だけを学べばいい、現場が上手くいけばあとのことはどうでもいいと言った傾向が今尚、色濃く残る建築現場ではその傾向が顕著ではないか、なんて思うのです。私は昭和の男ですから、どんなに納得してなくても、最終的にやると言ったらそれまでいくら反対しててもそこはスッパリ諦めてやるし、口と裏腹の行動を取るなんて子供の所業だと長年思っておりましたが、どうやら世の中はそんなに単純には出来ていなかった様です。そして、この(私にとって)おかしな現象はやらない者の個人的な問題だろうと片付けてしまおうとしていました。しかし、その傾向は年々加速している様に感じて、世の中全体がおかしくなってきたのではないかと密かに悩んでおりました。
「考える人」は石の様に動かない。
芳村思風先生が提唱し、行徳先生が世に広めたと言われる感性論哲学は思考ではなく感性こそが人間が重きを置く重要なことで、考えるのではなく、感じろ。との言葉はその概念を如実に、端的に言い表しています。行動を決定するのは脳の新皮質と言われる思考回路ではなく、脳幹周りの感情を司る部分だと言われていますが、確かに人は考え込むと動かなくなり、感動すると即行動に移します。これが真実だとすれば、私が得意として来た理詰め、理論武装、論破、ロジックで人を追い込んで合意を取り付けて行くやり方は、行動を促すどころか、逆に凍りつかせて人の動きを止めてしまう悪しき所業です。ひょっとしたら私たち昭和のパラダイムが間違っていて、思考ではなく感情に訴える方が今の世の中にとっては正解ではないのかと今頃になって気づいたのです。
関ジャニ∞の村上くん
先日、実践人の会の勉強会(森信三先生の教えを実践する会)に参加した際、パネラーとして登壇された行徳先生の口から「関ジャニ∞の村上くんを知っているか?」との意外な言葉がこぼれました。なんのことかと思いきや、なんでも村上君が感銘を受けた本と言うことで芳村思風先生と行徳先生が対談した「今こそ感性の時代」という書籍を何かのメディアで紹介したらしく、10年ほど前に出版された書籍であるにもかかわらず、今になって増刷を重ねる爆発的な売れ行きを見せているとの事でした。偶然にも最近パラダイムを見直して、感性論哲学にもう一度学び直すべきではないかと思っていたタイミングでもあり、自社の事業所で運営しているミニ図書館、つむぎ文庫の書棚にあったその本を改めて読んで見ました。私は感性論哲学を全く知らなかった訳でもなく、芳村思風先生や行徳先生の本も何冊か読んでいるはずなのに、その本に書いてあること全てがずっしりと腹に響き、今までの自分の思考が真逆だったと改めて気づかされたのでした。
今こそ感性の時代
この本には、なぜ論理思考がダメで感性を磨く必要があるのか、その事でどのような効果があるのかがわかりやすく書かれており、なぜ野生の動物には無く、人間だけが特性として持つと言われてきた理性がいかに意味を為さないか、その理由を延々と書き連ねています。その中で行徳先生の十八番と言われる野鴨の話ももちろん語られており、これからの混迷の時代を乗り切るには理性ではなく、野性(感性)が必要であり、人は考えるのではなく感じろ。と繰り返し書かれています。そこに書かれている引用やエピソードは、なるほど!と共感させられることばかりで、読み進めれば進めるほど、その度合いは深まって、これまでの自分の価値観が音を立てて崩れ去るのを感じました。まさにパラダイムシフトです。12月に入り年末に向けてスタッフとの個人面談をスタートしたのですが、その面談の中でも、これまで理詰めで行動を促してきたことの謝罪と、我々が理念として掲げ、目指している「四方良しの世界の実現」に共感(感じて)してもらえるか?と丁寧に話し合いました。これは私個人に起こったパラダイムシフトではありますが、私と同世代(昭和)の経営者の皆さんの中には少なからず、「やると約束したのにやらない」事に疑問を持たれている方が少なからずおられると思います。今一度、理詰めではなく、感じあう(共感する)コミュニケーションに取り組まれる事で、違う世界が見えるかも知れません。心より健闘を祈ります。(笑)
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