[第9回] 地域工務店の経営戦略の実例④「移動式展示場戦略・ドミナント戦略」

NEW!2021/10/2500:01191人が見ました

 ソルトの青木隆行です。今回も「地域工務店ならではの経営戦略を立てよう!」の実例シリーズの続きをお伝えします。今回はその4つ目で、「移動式展示場戦略」および「ドミナント戦略」がテーマです。

[前回]地域工務店ならではの経営戦略を立てよう!③

 さっそくですが今回のポイントです。頭の片隅に置きながら読んでみてください。

POINT】持続可能な次の一手は何か?

 

今の活況は続かない。持続可能な地域工務店になるべきタイミング

 コロナ期において住宅着工棟数は伸びを見せています。私のアドバイザー先でも順調に受注を伸ばしている地域工務店は多くあります。特に7月以降の集客や受注が好調で、ある工務店では過去最高の新規集客を獲得したという話さえあります。

 既知の通りコロナ期のライフスタイル・ワークスタイルは「おうち時間」「リモートワーク」などへ変化しました。オンライン化が進むと同時に、自宅での滞在時間が長くなったことが住宅需要を刺激した形です。上場ハウスメーカー各社のIRからも住宅業界は間違いなくコロナの恩恵を受けている事が分かります。

 

 しかし、この活況がいつまで続くかは分かりません。中長期的に見れば需要先食いによるリバウンド減もあると思いますし、人口減少による住宅着工棟数の減少時代は確実にやってきます。またコロナによる財政出動は国にとってかなりの痛手であり、各種税制優遇制度もどうなるか分かりません。コロナがきっかけでデジタル化は大きく進み、都市部から地方への移住もあるとは思いますが、それも軽井沢など特定の地域だけで他は限定的でしょう。つまり、今の活況はいつまでも続かないというシナリオで考えておいた方が得策です。

 業績好調時は成長を意識する事が多いですが、これはいずれ来る不況に対して準備をする期間とも言えます。『安きに居て危うきを思う(春秋左氏伝)』といわれるように、今のタイミングで持続可能な地域工務店づくりのために戦略転換を図っておくべきかも知れません。その事例が「移動式展示場戦略」と「広義のドミナント戦略」です。

 

移動式展示場戦略のメリットとポイント

 まず移動式展示場戦略についてです。これは1~2年程度の期間限定で単独のモデルハウスを建設・展示し、価格を抑えて売却するやり方で、基本的にはこれを繰り返すことになります。以前からあるやり方ではありますが、改めて注目すべき戦略だと思います。

 メリットとしては下記があると考えています。

1.売却が可能(総合展示場などと比べ資金が固定化せずに済む)

2.常に新しいアイデアをお客様に見せることが出来る

3.社内の総合的な設計力・提案力がアップする(家具やエクステリアを含めた提案力)

4.エリア内での認知度がアップし集客力が向上する

5.土地分譲(ミニ分譲)との相性が良い

 過去、私も工務店経営17年間で15棟の移動式展示場を建設しました。この戦略をもとに山口県という地方(商圏エリア85万人)で、年間新規集客数は常に1500組程度(今の情勢ですと集客は7割から半分くらいなのかも知れません)でした。できれば常に見せられる展示場を確保しておきたいので、2棟は欲しいところですが、計画的にやっていけば常に1棟の展示場で回す形も可能です。

 

 移動式展示場建設のコツは下記のとおりです。

1.幹線道路ではなく生活道路沿いに建設する

2.超高級地ではなく、ショッピングモールなどの近くに建設する

3.減価償却も考慮したうえで、総額3500万円前後で売却できるようにする

4.オープン当初から「売却型展示場」であることを告知しておく

5.数区画の土地でミニ分譲を行い、そこで建設希望者を募る

6.社内でプロジェクト化する(外注設計でもよいが共同で内容を検討する)

7.テーマ性を持たせて庭やインテリアにもこだわる

 ここでは、売却時の事を考え手間いらずですぐに入居できること(家具付き・エアコン付き)や実際に住んだ後をイメージしやすいようにしておくのが良いでしょう。またこれはよりリアルなお客様への提案にもつながります。細かいノウハウはまだまだありますが、上記をクリアしておけばかなり良い移動式展示場が出来ると思います。

 

工務店のドミナント戦略とは?

 続いては「広義のドミナント戦略」です。一般にドミナント戦略とは、同じ地域に集中出店することで、ブランドを地域に浸透させる戦略です。ここで考えるべき戦略は地域工務店のためにカスタマイズした「広義のドミナント戦略」です。つまり、店舗だけをいくつも構えるというものではなく、先ほどの移動式展示場をはじめ、多角化によってカフェやショップを作る事や、地域に集中した看板設置に加え現場広告の徹底や現場美化なども入ってきます。

 この広義のドミナント戦略によるメリットは下記のとおりです。

1.エリア内の市場認知度が向上し、ブランドが地域に浸透しやすい

2.住宅を中心に複数の業態を持つ事で安定的な収益を得られる

3.限定されたエリアでの工事になり効率化が図れる

4.競合他社の参入を防げる

5.成功すれば他のエリアで横展開が可能

 ここでは、広告宣伝費や設備投資額などの資金総額を考えておく事、そしてそれに見合ったリターンをどれくらいの期間で考えるかという事などが重要です。例えば私はカフェと工務店事務所の相性はとても良いと思うのですが、カフェ単体で収益が取れる状態をつくっておかなければやっている意味がないと思います。戦略的に考えて結果が残せる事業との組み合わせや、デジタルとリアル両方からのプロモーションも必要です。

 

 ドミナント戦略のために踏まえておくべきポイントがあります。

1.限定されたエリアで、限られた事業資金を有効に活用する

2.資金の固定化を防ぎ、フレキシブルな体制を取っておく

 地域性などマーケティングを行ったうえで臨機応変に対応する必要がありますが、ドミナント戦略の考え方は、この活況における反動に対応した持続可能な工務店を作り上げるために必要な戦略の一つになるはずです。

 

 まとめると上記2つの戦略(移動式展示場戦略・ドミナント戦略)は、

地域ブランディングにより市場認知度を上げて、持続可能な業態を組み合わせた工務店像を作り上げる

 つまりは、このために有効な戦略の一つとなります。

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