こんにちは
ネクストプラスの戸谷です。
この連載では「中小工務店が自社ブランディングを確立して、行列のできる工務店になる方法」についてお伝えしています。
この原稿を書いている5月20日の時点はまだ新型コロナウイルス対策に対する緊急事態宣言が、海道、関東と関西の一部で継続されおり、解除された39県でも第2波が懸念されている状態です。チカラボの記事もまだまだ「コロナ」がキーワードになっていますが、今回の記事ではもう少し長期的な視点で住まいとブランディングを考えていきたいと思います。
結論を先にお伝えすると「昭和的な住まい(文化)を終わらせる」そして「新しい住まいを提案する」可能性を探っていきます。それこそが工務店のブランドに直結し、多様性を求める時代に生き残る方法だからです。
具体的に取り扱うのは「核家族」「職住分離」「専業主婦」「住まい方の変化」なのですが、これだと難しくなりそうだなと。そこで昭和的な住まい(文化)の代表として『クレヨンしんちゃん』(以下、クレしん)を例に挙げてお伝えしていきます。
※もちろん今回の話もすべての工務店に当てはまるものではありません。都市郊外のベットタウンは比較的当てはまると思いますが、時代的にはまだ若干早い気もしていますので(すぐの成果を求める方は)参考程度にしていただければと思います。
【目次】
1:昭和的住まい(文化)としての『クレヨンしんちゃん』=野原家とは?
2:『野原家モデル』と脱却すべき理由とは?
3:令和時代の住まいとブランディングとは?
【1:昭和的住まい(文化)としての『クレヨンしんちゃん』=野原家とは?】
クレしんは1958年生まれの臼井儀人さんが1990年からマンガ連載を開始(アニメは1992年)し、2015年の段階で国内外と関連書籍を合わせると1億4800万部、劇場総動員数2,662万人、アニメの最高視聴率28.2%(4歳~12歳にいたっては67.6%)を達成した国民的マンガ・アニメです。あなたもきっと一度は見たことがあると思います。
wikipediaより
そして主人公の野原しんのすけの家族は、
・野原しんのすけ
主人公で5歳の幼稚園児
・野原みさえ
29歳の専業主婦
・野原ひろし
35歳で商社に勤めるサラリーマン
・野原ひまわり
しんのすけの妹で0歳児(原作16巻、アニメでは96年に誕生)
・シロ
飼い犬。捨て犬をしんのすけが連れ帰り、シロと名付けた。
これこそいわゆる日本の中流階層の家族構成の典型であり、あなたの会社が想定しているターゲット像そのものではないでしょうか?
もう少し詳しく見ていくと、野原家は夫婦とその子供だけからなる「核家族」であり、ひろしは東京の職場まで通勤する「職住分離」のサラリーマンで、みさえは「専業主婦」です。つまりクレしんは日本の中流階層の特徴である核家族・職住分離・専業主婦といった昭和的な価値観や世界観がベースになっていることは明白です。
ちなみに作者の臼井さんは静岡生まれ、埼玉県春日部市育ちです。春日部は人口約23万人、国道と鉄道が交差する交通の要所で典型的な東京のベッドタウンです。抑えるポイントは、作者である臼井さんが存命なら62歳で、30前後の住宅購入検討者の大半がクレしんを見て育ってきたということです。
ちなみに作者を工務店経営者、視聴者を住宅購入検討者に置き換えてみると、あなたもお客様もクレしん的(昭和的)な価値観、家族観を受け入れて育ってきたと言えるのではないでしょうか。
【2:「野原家モデル」と脱却すべき理由とは?】
ここでいう「野原家モデル」とは核家族・職住分離・専業主婦といった昭和的家族モデルのことを指します。建物としてはやはり昭和に生まれたnLDK(リビング+寝室)モデルのことです。
なぜこの「野原家モデル」から脱却すべきなのでしょうか?その理由の一つが「専業主婦」の減少と共働きの増加です。
共働き世帯が専業主婦世帯の数字を上回ったのが1992年、クレしんがアニメ化された年です。その後2000年くらいまでは大差なく推移していました。そして20年後の2012年から一気にその差が開きます。(その理由はいくつもあるのですが、話始めると長くなるのでまた別の機会に…)
独立行政法人 労働政策研究・研修機構「図12 専業主婦世帯と共働き世帯 1980年~2019年」よりhttps://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0212.html
さらに2000年代の後半には液晶テレビが主流となり、子供部屋にもテレビが置かれるようになります。同時にスマートフォンが一気に普及したのも同時期です(iPhoneが2007年、Android端末が2008年に登場)。その結果リビングに集まって家族だんらんを楽しむよりも、各自が自室で過ごすかスマホを通じて外部とつながる傾向が強まっていきました。
そして3月の記事でも紹介しましたが、住まいの意味は変わり、求められる価値観も変わりつつありました。ざっくり言うと「機能から意味へ」の流れです。(詳しくはhttps://chikalab.net/articles/485)
そこに今回の新型コロナの影響で外出自粛と在宅ワークの大きな波が訪れました。(まだまだ限定的ではありますが)オフィスは福利厚生施設(メンバーシップの確認)になり、自宅が職場になりました。
つまり昭和の終わりに示された「野原家モデル」も、30年かけて「都市部の核家族において女性を専業主婦として家に縛り付けておく」部分が終わりつつありました。そこにわずか2~3か月で「男性が外でお金を稼いでくる職住分離」の部分までもが一気に解体に向かい始めることになりました。
【3:令和時代の住まいとブランディングとは?】
詳しくは4月の記事(https://chikalab.net/articles/507)を読んでいただきたいのですが、令和をコロナ後の時代だとすると、住まい方も働き方も変わったのに家が変わらない理由は存在しません。昭和に生まれたnLDK的な間取りや家に求められる意味ももう一度考えなおす必要がありそうです。
ちょうど先日、外資系企業に勤める30代の男性と話す機会があったのですが「妻が出勤する週2日、在宅勤務の自分が子供の面倒をみているのですが、仕事にならずに大変なんですよ。特にWeb会議がどうにもならないんです……」と言っていました。
さらに家で過ごす時間は長くなります。新しい働き方として副業することも当たり前になるはずです。(各種制度のことはさておき)「住まい」と「子育て」と「仕事」の新しい悩みは今後さらに加速し、増え続けるはずです。
そこに工務店として何かしらの回答を用意できていますか?
デザインや性能でブランディングできるのもあと数年程度だと予測しています。それは当たり前の最低条件になるからです。これからは新しい暮らし方を建物を通じて提案できるか?そしてそれを発信して、消費者の共感を得られるか?
これこそが令和の時代に選ばれる工務店ブランディングの最重要ポイントだと考えています。
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