数年前、北海道の知内町で森林ワークショップに呼ばれた際、ドイツのフォレスターと一緒に、町の家具建具製作会社を訪問しました。タイトルは、そのときに会長さんが話された印象的な言葉です。
その会社は、広葉樹を剥いて化粧板をつくり、それを貼り合わせて高級な成形家具を製作し、有名なコンサートホールなどに提供しています。優れた技術をもっています。以前は、北海道からオークや白樺やタモなどの大木を仕入れて製品を製作していたそうですが、ここ数十年は、ドイツなどから加工された化粧板を輸入しなければならない状況だそうです。なぜかというと、北海道で、以前あった天然林の大径木がすでに伐り尽くされてなくなってしまったからです。「せっかくここにある化粧板を剥くこの機械も使う需要がなくなってしまった」と不満を露わに言われました。
アメリカのある地域でも同じようなことが起こっていると聞いたことがあります。広葉樹材は「流行り」があります。5年おきくらいにそれは変わります。黒肌のオーク材が流行ったとき、その地域のオークが片っ端から伐採され製材されて高価に売られました。流行りが過ぎで数年後、再びオーク材の需要が高まったとき、その地域の製材工場はオーク材を仕入れることは残念ながらできませんでした。すでに前の流行りのとき伐り尽くされていたので。
原木は重くてかさばります。いかに山から工場への輸送コストを抑えるかが鍵です。遠くなると、工場の採算は合わなくなります。だから地域で持続的に材が供給されることが重要です。
ドイツやスイスでは、幸運なことに、成長量の範囲内での伐採を規定する制度もあり、次世代のことを考えて、様々な大きな木を残しておく森林経営をする森林所有者(州、自治体、民間)が大半なので、製材工場も安心して経営し、将来への投資もできます。とりわけたくさんの種類がある広葉樹を専門に製材する工場においては大切です。
日本には、広葉樹が育つのに最適な環境がたくさんあります。素晴らしい材質のスギやヒノキとともに、様々な広葉樹を持続的に育てていくことは、地域経済に、生態系に、そして観光に、様々な利益を与えると思います。今からでも遅くありません。50年後、100年後のために。
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