工務店の最大の資産は「社長の想い」だ

2018/11/3013:39217人が見ました

ブランドづくりは既存のブランドのひな形をまねてパーツを組み立てる作業ではなく、「だれかにこの想いを届けたい」という想いが起点になります。今回はそんなお話です。

 

 前回、工務店のブランディングにおいて、自社の目的を1行で表現することが肝心だと話しました。なぜなら、そこに経営者の想いが集約されるから。そもそも、経営者の想いがなければブランドは始まりません。「マインドマップ」というツールを使って3年後のなりたい姿を見つけましょうとおすすめしたのも、それがブランドづくりの一環だからです。

 あなたの想いがブランドの「シード(種)」となるわけですから、ただ放っておいても芽は出ません。土地を耕し肥料を与え、水をやり日に当てて大事に育てて始めて実を結びます。

 ブランドも同様です。種をどう育てるかも重要ですが、それ以上に、経営者として何より先にすべきことはブランドの種を見つけることです。

 

ブランド存続の分かれ目を考える

 最近うれしかった話をさせてください。詳細は調査中ですが、先の熊本地震において弊社が提供するシステムで部分断熱リフォームを行った物件が激震地の益城町近くにありました。築30年のそのお宅は2階にヒビは入ったもものの、部分断熱リフォームをした1階はつぶれず、いざというときに住む人を守るシェルターの役割を果たせたことがわかりました。この事例を、「限られたコストで主たる居住スペースを住みやすくする」という私が掲げた目的が適切であった証明として受け止めています。

 一方、逆のベクトルの話ですが、三菱自動車の燃費偽装問題がニュースになっています。少なくとも昨今の三菱自動車の経営陣は、想いや理念を持たず、車をただつくっていたのではないでしょうか。理念のないものづくりはつくり手の士気を下げ、ユーザーの深い共感を得ることができません。

 

「まっとうな妥協点」を探す

 目的を掲げるうえで大事なのは「まっとうな妥協点」を見つけることです。どの分野でも精度や品質を追求すると、一方で商品としての市場価格とコストとのバランスを考慮せざるを得ません。

 家をつくる際には、ユーザーの暮らしをまず想定し、それに対する要不要をとことん考えることで、妥協すべきこととそうでないことの理由を見つけていきます。

 かつての私はひたすら高性能な家を目的としていました。しかしあるときから、性能よりも「住む人が幸せになること」「生活の質を上げること」を目的にしたのです。あるときとは、住宅において必要以上の高性能はつくり手の趣味でしかない、それは誰も幸福にしない、と悟った瞬間です。

 高性能を目的とするとコストがかかるため、ユーザーは限られます。では予算のないお客様はどうなってもいいのか。それは違うはずだ。モノの性能を第一に突き詰めるチキンレースに参加するのは、もう止めようと思ったのです。

 

「すべてが最高」が良いわけじゃない

 例えるなら、銀座のこだわりの頑固オヤジの寿司屋のようなものです。当然店には価格表がありません。最高の立地、最高の職人、最高の食材。ただし食べ方を指定され、客が店主の気に入らない振る舞いをするとたしなめられるような店で、はたして客は幸せでしょうか。

 すべてにおいて最高を突き詰めた店が良い寿司屋なら、回転寿司はダメな寿司屋なのでしょうか。そんなことはありません。ファミレスでも、牛丼屋でも、まちのごく普通の寿司屋でも、ユーザーのニーズにきちんと応じています。価格の高低はただのセグメントで、そこに優劣などあるはずはない。安くても良いものは良い。高ければ良いというものではない。そう思うのです。

 

何を突き詰めるべきかを悟った

 ピンポイントのハイレベルだけを突き詰めることへの疑問は、住宅のデザインについても言えることです。著名な建築家がデザインだけを突き詰め、住む人の使い勝手をまったく無視した住宅は良い家でしょうか。私にはそう思えません。

 少なくとも住宅については、何か1点だけを突き詰めることへの違和感を感じます。最近は「住宅の燃費」という概念が普及してきました。私はそれを広めてきた側だと自負していますが、それだけにとらわれるのも間違いだと思います。

 住み手にとって必要な広さ、適切な間取り、内外の質感、インテリア、快適さなど、住み心地はトータルバランスで決まります。そう気づいたときから、高性能一辺倒のものづくりには意識が向かなくなりました。

 追求すべきはユーザーの幸せの最大公約数を満たすことであって、私の目的は住まいを通じてユーザーの生活品質を上げることです。いわば、ものさしが「自分の基準」から「ユーザーの基準」にシフトチェンジしたのです。以来、プロとしてのモラルを守りつつ、ユーザーの指向性にあわせて自分たちが可変する余裕が生まれました。いまや当社(高松市のアンビエントホーム)は、工務店でなく「生活品質提供企業」になったと思っています。結論は人によって異なるでしょうが、こういう試行錯誤を経てたどり着いた自分の根っこが、ブランドの種なのです。

 

工務店の最大の資産とは?

 これからはブランドだけが残ります。実際の話、大手ハウスメーカーに比べると工務店にはマーケティング能力・営業力・商品力すべてにおいて余裕も時間もありません。そんななかで小さい会社の一番の資産は「社長の想い」です。これは上手く育てれば大きな破壊力・突破力を持つ資産です。他の資産は、大手に比べると小さなものです。しかし経営者の想いだけは、資産として大きさが変わらない。我々はここなら勝負ができるし、勝つ可能性があるとしたらここしかありません。経営者は、その認識をしっかり持つべきです。

 

 

 種をどう育てるかについては次回以降にお話します。

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