自社をブランディングする際の肝は、一貫性です。新築でもリフォームでも、商品の価格帯が変わっても、つくるものの軸は決してぶれない。それがブランドになるのです。
高性能住宅しかつくらないワケ
私が高性能住宅しかやらないのは、家守りとしてメンテナンスしていけるものをつくるのが工務店の使命だと思うからです。
工務店が家守りとして関わるのは新築とリフォームですが、小規模な家族経営の工務店を除いて、家守りを続けるためにはある程度の事業規模が必要です。なぜなら、家業の規模では商品数を揃えられないからです。事業としてやるなら、価格帯ごとにラインアップを立てる必要があります。
ブランディングの肝は「軸」
その際にすべての商品に揺るぎない「軸」をつくるのが、ものづくりとブランディングのポイントです。
たとえば、高価格帯の新築住宅では高性能をうたい、一方の低価格帯新築住宅やリフォームではコスパをうたう工務店をユーザーは信用するでしょうか? 少なくとも、それではユーザーにブランドとして認知はされません。なぜなら一貫性がないからです。価格帯の上下で主旨が違うと、どこかで言っていることとやっていることがズレてきます。ブランドであるためには、商品とサービスの軸が必要なのです。
一貫性持たせることの重要性
当社・アンビエントホームの話をしましょう。新築商品のラインアップは、フルオーダー、設計にルールを設けたセミオーダー、図面からかっちり固めた規格住宅で、それぞれユーザーが予算に応じた家づくりができるようにしています。自由度は価格に応じますが、アトリエ建築家のデザインであること、高気密・高断熱であること、長く使える家であることに一貫性を持たせています。
リフォームでは、対象を限って効率よく住環境を向上させること、安全性を高めること、つまり「コスト内で家と人の寿命を延ばすこと」に焦点を定めた提案型パッケージ商品を中心に据えています。もちろん最初からこうだったわけではなく、徐々に拡大していきました。
このように上から下まで、新築からリフォームまで、縦軸も横軸もデザインと性能に重点を置いて商品の性格を一貫させています。そうすると人口100万人弱の香川県では「高性能のアンビエントホーム」として認知されるのです。
地域ナンバーワンを目指す
ブランドといっても、工務店が世界に名だたるスーパーブランドになる必要はありません。まちで評判のおいしいパン屋でいいのです。もっと言うと、パンは地方発送で販路を広げれば売上日本一が可能ですが、住宅はそうはいきません。工務店の商圏はパン屋さんよりシビアです。だから「地域ナンバーワン」を目指すのです。年間10棟であっても、自社商圏内で何かの一番(高性能でも、自然素材でも、趣味を満喫できる家でも)になれば充分にブランドと言えます。
主旨に合わないものはつくらない
その際のポイントは、つくるもの、売る商品に一貫性を持たせること。「オファーがあれば何でも受けます」では、売上は伸びてもブランドにはなりません。
当社は、投資物件である賃貸アパートの依頼を受けたことがありますが、そこでも性能は譲りませんでした。なぜなら、投資物件であっても当社が建てた住宅に変わりはないからです。そこで性能を落とすと、住人に「アンビエントホームのアパートに住んでるけど、普通」と言われるでしょう。
ブランドの主旨と異なったものはつくらない。それくらい徹底して一貫性をもたせなければならないのです。仮にアフターサービスで地域ナンバーワンをうたうなら、リフォームも新築もサービスの質を変えてはいけません。大事なのは、それをいかにやりきるか、です。
ブランドは結果である
当社のモデルハウスは今年で19年目になりますが、いまも現役で体験宿泊も可能です。経年変化を楽しめる外観にしたので、必要なメンテナンス以外は意匠を変えず、室内も建てたときのまま。ここに当社の一貫性が現れています。数年ごとに建て替える展示場のモデルハウスよりも強い説得力を持つと思いませんか?
ブランドは結果です。会社の意思とそれにともなう行動が、ブランドとしてかえってくるのです。広告さえ打てばブランドになると思っている方がいるとすれば、それは間違いです。
「やめない」ことが大事
一旦始めたら、続けないと価値は落ちます。踏ん張ればブランドとして育っていきます。
そう、どこまでも意思の問題なのです。新築からリフォームまで一貫性のある意思を持つこと。価格やジャンルがまるで違う、軸がぶれるのはありえないことです。ブランドは、なろうとしなければなれません。商品・サービスの一貫性とやめない意思が必要です。実感としては、「続ける」ではなく「やめない」が正解だと思います。実際やめたくなるときもあり、そこで軸をぶらさずやり抜くのはしんどいことです。でも、やめたらそこでアウトなのです。
高性能住宅も、「国が決めたから」「ユーザーに言われてしぶしぶ」ではブランドの軸にはなりません。自分たちがどういう価値を提供する会社かをきちんと示せるモノを一貫性の主軸に据えるべきです。性能でも、地元木材でも、軸になりうるものはたくさんあります。最初は大変でも意思があればできます。とにかく、最初に自社のビジネスモデルをデザインすることがとても大切です。