ブランドを立ち上げたら、「維持」しなくてはなりません。始めたサービスは決してやめない、品質向上+コストダウンをやり続けることがポイントです。
サービスの意味を理解し、やり続ける
最近は着工式を行う工務店が増えてきました。感触としては1割程度が行っているでしょうか。始めたからにはやめないことです。今はそれらイベントの様子を工務店が自社のサイトに公開したり、施主自身がSNS等でシェアするのも珍しくありません。自分のときにそれがなかったら、施主はイヤな気持ちになるでしょう。着工式・地鎮祭・上棟式・引渡式、始めたらどれもやめられません。こればかりは価格帯の多寡にかかわらず同じようにやるべきです。
なぜイベントは同じように扱うのか? それは、新築住宅はほとんどの施主にとってハレの舞台だからです。完全注文だろうが企画型選択式だろうが、「イベントは平等に」が鉄則。結婚式なら列席人数やしつらえの豪華さは価格なりだとしても、費用が100万円でも1000万円でも、主催者に対する基本的な扱いは変えないはずです。それと同じだと考えればいいのです。
「平等」と「公平」を分けて考える
サービスは「平等」と「公平」のすみ分けが必要です。たとえばユーザーは、低価格帯だから打ち合わせ回数が決まっているとか、低価格帯だから設計者やコーディネーターが付かない、といった予算に応じたサービス内容の差異は納得します。ところがイベントに関しては、それはないのです。ここを間違えている工務店は意外に多いと思います。注文住宅はモノではなく「家を建てるイベント」と、とらえるべきです。建物だけでなく建てる過程をも提供している、と。
まずサービスの提供者は、自分たちの提供するサービス・商品が何なのかを理解しなくてはなりません。そのうえで、サービスと商品について、平等のルールで動かすものと公平のルールで動かすものとを意識的に分けて考えます。建物は「人を守る」という基本性能は平等のルールが、サイズと趣味性の部分は公平のルールが機能します。
人生の晴れ舞台である着工式や上棟式といったイベントは、大げさに言うと人としての尊厳に関わってくるので平等のルールを適用します。ここを予算に応じた公平なサービスにすると、人はとても傷つくのです。
続ける前提で始めなければならない
一度始めたサービスやイベントをやめるとものすごくイメージを悪くします。なぜなら、友達がそうなら自分も、というノリ・感情になっているからです。かつては地鎮祭と上棟式は当たり前でしたが、着工式と引渡式もデフォルトになりつつあります。目新しかったサービスやイベントも、SNSであっという間に拡散され、共有されます。そんななか、途中でやるのをやめたら何と言われるでしょうか?
ですから、感情に影響する部分は価格帯にかかわらず平等に、あとは理屈で公平に、がおすすめなのです。
質を上げて、売価は上げない
品質向上もやり続けること。終わりはありません。品質を上げるとトレードオフでコストが上がるので、コストダウンが不可欠です。そう、品質向上とコストダウンは表裏一体の関係なのです。
コストダウンだけだと利幅は上がりますが質の低下を招きます。やるべきは、質を向上させて売価を上げないためのコストダウン。ユーザーの支持を得続けるにはそれしかありません。
ブランドとは何か。もう一度おさらい
そもそもブランディングの目的は、ブルーオーシャンに自分たちの市場をつくり、参入障壁を上げていくためです。市場をつくるとは、他がやってないことをすることです。
でも、新しい市場をいくらつくっても、後追いでマネされ、サービスの内容も質もチキンレースになっていきます。参入障壁を上げるとは、進化させることです。つまり、利益率の向上でなく、品質の向上のためのコストダウンを行う。これこそがブランドです。
ブランドの一番大事なところはユーザーの頭のなかにあります。なぜなら、ブランドはイメージだから。一度始めたサービス・イベントをやめてはいけないもう一つの理由は、せっかく彼らの頭のなかにできたブランドのイメージを変えてしまうからです。ですから、新たなサービスを始める前には続けられるかよくよく検討して下さい。
営業を楽にしたいなら
あくまでも品質の向上が先で、コストダウンは後。順番が重要です。弊社も新技術の導入や工程の改善などで品質を上げ、それにともなってコストも上がりましたが、資材調達を工夫するなどしてコストダウンを進めました。
しかし、売価は下げてはいません。ユーザーの幅を広げるために商品数を増やして多様化に応じましたが、下げたコストは安売りのためでなくすべて品質に使います。
ブランドはつくるより維持するほうが大変。本当にそう思います。ただ、それに成功すると、売り手がユーザーを選べる立場になれます。
楽な道はありません。広告大量投入、クレーム覚悟でしかばね踏み越え、とにかく売るという手もあるでしょう。でも私はブランドを維持する大変さをやってでも、受注が楽なほうを選びました。
努力は必要、頭と体はきついですが心が楽なのです。楽に営業したかったら、ブランドを立ち上げましょう。