まず従業員の満足度を高める。

2018/12/0309:2013人が見ました

ブランドを立ち上げた後、継続・成長させるには、高い顧客満足度を維持し続けなければなりません。それにはまず従業員満足度を高めることが必要です。

 

ブランドの維持・成長には生産性の向上が大事

 ブランドの概念についてはこれまでのお話でご理解いただき、社内で十分検討もされたと仮定して、その後の話をしたいと思います。

 ブランドを立ち上げる過程は見た目が華やかなのでいろいろな所で取り上げられやすく、また気持ち的に取り組みやすいのです。しかし、ブランドはいったん作ればそれで仕舞いというものではありません。

 ブランドを立ち上げ、商品をつくり、それで受注できたとしても、それが続く保証も、利益が上がっていく保証もないわけです。あなたが工務店という事業をやっていこうと思っているなら、何よりもきちんとした収益を出し続けなければなりません。作ったブランドを継続・成長させなければなりません。そのために、やらなければならないのが品質向上とコストダウンです。しかしそれらはあくまで結果です。その結果を出すために日々やり続けなければならないのが、生産性の向上なのです。

 

顧客満足度維持には従業員満足度が影響する

 ブランドとして収益を上げ続けるためにはCS(顧客満足度)の向上が必要です。CSを向上させるには、ターゲットのニーズに合った付加価値のある商品をつくり続けなければなりません。商品づくりはある程度集中した作業で事足りますが、それを仕組みとして維持し続けるには、実はES(従業員満足度)の向上が重要なファクターになってきます。

 いくら優れた商品をつくっても、ESの向上を同時に図らなければ最終的には人が持ちません。商品をつくるなら、同時に人を動かす仕組みも考えなければならないのです。

 

仕組みづくりが経営者の仕事

 ではES向上のために経営者としてやらなければならないことはなにか。端的に言うと、従業員が、高効率かつ高付加価値の仕事ができるようにすることです。短い労働時間で多くの収益を得られるようにする仕組み作りは、経営者の最も重要な仕事のひとつと言ってよいでしょう。会社として「最短の労働で最大の利益を得る」ことを目指して進化し続けないと、ブランドの確立も収益も、社員の定着も図れません。

 コアになる理念を明確にする、理念に対応した商品をつくる、商品の基になる理念を従業員に知ってもらう、理念を共有できる従業員に対してESの向上を図る仕組みを作る、従業員のポテンシャルを最大限引き出す、スキのないサービスを提供する。ブランドが利益を得るまでの道筋です。この流れの中で従業員をないがしろにすると、まずESが下がり、そうするといつかCSも覚束なくなっていきます。

 

建設業の生産性は他業種に比べて低い

 ブランドの維持には品質向上とコストダウンどちらも必要です。コストダウンは社外と社内の二種類に分けることができます。社外はいわゆる外注、アウトソーシングの量の加減で対応できますが、社内の場合、日本では正社員そのものを簡単に増減させることはできません。社内のコストダウンを図ろうと思ったら、労働の質の向上が問題になってきます。すなわち、生産性の向上なのです。

 そもそも建築業界の生産性は他業種に比べて低い。業界が怠けているからではなくて、構造的な理由があります。基本、単品受注生産であること、労働集約型であり生産付加価値額に占める人件費の割合が高いこと、また中小企業の割合が高いことなど理由は多々ありますが、逆説的に伸び代が大きいとも言えます。改善の余地が大いに残っています。

 建築業界は、生産性に関しては他業種に比べて、少ない努力で抜きん出ることが可能な業界なのです。つまり真剣に取り組めば成果が出やすい。これを放っておく手はないでしょう。

 

まず従業員が満足する仕組みが必要だ

 さてブランドとしてCSを上げようと思えばESが必要、ESなくしては継続的な顧客満足を作り出すことはできません。ここまでは問題ないと思います。

 CSを向上させようとして経営者がやりがちな間違いは、サービスの在りようです。社員に滅私奉公を求めて、一時的に応じてくれたとしても、それは長くは続きません。そしてサービスというものは、ムラがあったり続けられなければ、却って仇になるものです。従業員が自分の仕事に満足しているなら、サービスは継続可能です。だから順番としてはESの確保が先です。その上で、継続可能なサービスを打ち立てるのが正解です。

 今後本連載は、生産性の向上に関して具体的なお話をしていきます。詳細に関しては、私が本当に役に立った本を厳選してご紹介したいと思います。本当に学びたい方は、是非ご一読下さい。最終的に経営者として生産性の向上を図ることが身につくように話を進めていきます。ブランドの維持向上による会社の存続を願うなら、必ず役に立つはずです。

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