こんにちは。
ひと・住まい研究所の辻󠄀です。
連載6回目となる今回は、前回に引き続き「つくるプロセス=生産工程」を確立するための具体的な手順をお伝えしていきます(STEP2~)。
ちなみに前回の記事はこちらです。https://chikalab.net/articles/739
STEP2:自社が目指す(約束する)「いい家」を定義付ける
STEP1で自社の家づくりコンセプト(自社の想いや考え方)をまとめた次は、自社が目指す「いい家」を定義付けます(条件設定する)。これは「つくるプロセス」の中身に大きな影響を与える、とても重要な作業となります。
住宅建築の実務者の方であれば常に意識していることだと思いますが、改めて文字にしてうまく表現しようとすると、なかなか難しいものです。具体的には下記のような流れで検討すると整理しやすいと思います。
・自社が目指す(約束する)「いい家の条件」を挙げる
↓
・上記の条件を実現するために必要となる各要素を洗い出す
↓
・上記の要素ごとの目指すべき状態(目標)を明確にする
大きな項目からより具体的な項目へと順番に検討していくことで、それぞれの相関が整理できるので、まとめやすくなります。
ここでのポイントは、家の基本性能(構造・温熱・省エネ・耐久性など)に関わる項目があった場合、できるだけ目標を定量化(数値化)して表現するということです。そうすることで「つくるプロセス」の中身が、より具体的かつ実際的なものになり得るからです。
とは言え、この作業の内容を言葉だけで伝えることは難しいと思うので、参考事例として私が考える「いい家」の定義を下記にまとめてみました。できるだけ本質的な項目を網羅したつもりですので、みなさんの定義付けの作業の参考にしてもらえれば幸いです。
参考)いい家の定義(条件・実現する要素・目標)
■ 自然災害に強いこと
・耐震性:地震によって倒壊や崩壊せず、最小限の損傷で済む
・耐風性:暴風によって倒壊や崩壊せず、最小限の損傷で済む
・防水性:雨水の侵入を防ぐ
■ 日常生活がしやすいこと
・動線:効率的に移動ができる
・収納:適切な場所に適切な量がある
・ヒューマンスケール:住まい手に適した空間や寸法である
・機能性:各パーツ、設備機器などの使い勝手がよい
・空気質:空気汚染による健康被害が発生しない
・ランニングコスト:光熱費やメンテナンス費が最小限で済む
■ 長持ちし、長く住まえること
・耐久性:構造躯体の劣化や不具合を軽減する
・耐用性:ライフスタイルなどの変化へ適応しやすい
・更新性:維持管理および更新がしやすい
■ 居心地がよいこと
・温熱環境:冬暖かく、夏涼しい
・光環境:適切な明るさが得られる
・視環境:内外ともに適切な視線の抜けがある
・音環境:外と室内、室内間の音の伝わり方が適切である
・空間力:落ち着くことができる
■ 地球環境に配慮していること
・省エネルギー:最小限のエネルギーで生活できる
なお、ここではあえて定量化した目標は記述していないので、前述したとおり実際にはそこへ踏み込んでまとめておきたいところです。
また前回のSTEP1の「家づくりコンセプト」との接点を併せて考察してみてください。「家づくりコンセプト」と「いい家の定義」が交わっているところがあれば、そこが自社の家づくりの中心的な項目であると言えるでしょう。
STEP3:現状の「つくるプロセス」を洗い出す
どの工務店においても「ものづくり」をしている限り、必ず「つくるプロセス=生産工程」は、すでに存在しています。
STEP3では、その今ある「つくるプロセス」を一度洗い出してみます。具体的には、各工程の作業項目やその内容、手順などを列記するということです。言い換えれば、各工程における「作業の棚卸し」をしてみるということでしょうか。
その際、新たな「つくるプロセス」を構築することを踏まえて、連載の3回目(https://chikalab.net/articles/658)で記載したように、業務全体を下記の「4つの工程」に分けて、それぞれを細かく書き出してみるとよいでしょう。
①説明・同意工程/広報・営業
② 企画・計画工程/設計
③ 実現工程/施工
④ 見守り工程/メンテナンス
こうして書き出した現在の「つくるプロセス」を俯瞰して見ることで、その改善点が見えてくると思います。
次回は残り(STEP4~6)の内容を解説していきます。
希望者に冊子を進呈します
昨年私が書き下ろした「地域工務店的生産工程の確立」という冊子があります。このチカラボの記事の基にもなっているものです。この冊子のタイトルやチカラボの連載記事に「ピンとくる」方は、必要事項をご記入いただき下記のメールアドレスまでお送りください。冊子を進呈します。
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