【第2回】現場の9大管理について①「工程管理、品質管理、原価管理」  

2021/01/2011:163274人が見ました

住宅産業塾の佐野です。前回現場監督の仕事の基本を再確認する「現場監督の仕事とは何か?」というテーマで、現場監督の仕事には工程/品質/原価/資材/労務/安全衛生/廃棄物/手続き、そしてお客様対応(顧客管理)「9大管理」があるとお伝えしました。

この9つの管理項目は「良品質住宅」を実現するための必要条件です。今回からは、この9大管理について順を追って説明いたします。

 

1.工程管理

工程管理の目的は、「品質を維持しながら時間管理を行い、お客様と約束した工期どおり仕事を終わらせること」です。

この工程管理をおこなうためには、工程計画(工事工程表)をしっかり組むことが大切です。工程表に沿って工程毎の仕上り品質、工期を管理しながら次工程に工事を進めていきますが、予定通り進まないこともよくあります。そのために、予備日を設けて調整を図るなど“先が読めるようにしておく”先行管理という考え方が大切です。

先行管理というのは良品質住宅を実現させるために計画的に仕事を行い、かつ予防措置を講じるための重要な管理です。先行して手配することにより仕事を計画的に進めることができ、品質のバラつきを事前に予防することが出来ます。「労働力」「資材」「道具」など、仕事をする当日までに間違いなく揃えて準備しておくこと、それが“段取り”であり“先行管理”であって、工程管理の基本的な考え方となります。

この先行管理をうまく行うには、すべて先手・先手に手を打つ仕事のやり方を身につけておくことが大切です。そのためには「総合手配・指示管理表」のような、先行手配がミスなく行える仕組みをつくることが必要です。すべて段取りよく準備する手法が先行管理であり、先行管理の実践をガイドするのが「工事工程表」です。

自社の建築工程の流れを標準化して定めたのが「標準工程表」です。この標準工程表をもとに各個別邸工程表をつくり、管理します。このようにすると工程表が作成しやすいだけでなく工程管理がしやすくなります。これらのツールをうまく活用しながら、工程管理をおこないます。

 

2.品質管理

良品質住宅を実現させるために、施工の品質管理が欠かせません。仕事の品質を上げることはミス・ロスをなくし、仕事のやり方を効率よくします。その結果、クレームなど発生しない品質のよい住宅を適正価格でつくることが可能になるのです。

品質管理をしっかり行うには、きちんとした「品質基準」の確立とその検査体制が重要になります。品質管理を徹底しているという工務店のなかにも、品質基準を疎かにしているところが少なくありません。自分の確かな目と経験を重視しているようですが、「目と経験」というのは人により判断基準がまちまちです。基準がなければ大工・職人などつくり手に明確な品質を求めることも出来ませんし、自主検査体制も築けません。品質管理は、あくまでも明確な基準を定め、それに合格しているか不合格かで品質を判断するやり方が基本と考えてください。

家づくりの品質を管理する基本は「標準化・システム化」にありますが、その基準となるのが「標準施工詳細図」です。品質管理体制を実施していくとき大切なことは、現場の施工にかかわるすべての大工・職人、協力業者が「品質基準」を理解し、その品質基準に基づいた施工を責任を持って行うことです。

もし品質基準に合わない工事を行った場合は、その工事を行った施工業者の責任で工事のやり直しを行い、納め直させるという厳しい原則を施工業者と会社が相互に確認し、徹底し合い、緊張感をもって仕事をすることも大切です。

  なお品質管理を行う基本になるのは「完成された図面」と「完全な仕様書」による工事が行われているということです。これについては、別の回で説明いたします。

 

3.原価管理

工務店は、施工現場の生産活動で利益をあげるのが基本です。利益をあげるのも、いくつかの現場で帳尻を合せる“どんぶり勘定”的な曖昧なやり方ではなく、一つひとつの現場ごとに計画した利益を確実にあげていくようにしなければいけません。そして、現場にかかる原価が膨らまないようにしっかり管理することが必要です。そのように個別邸ごとの決められた粗利益を管理し確保していくのが原価管理の目的です。

(なおコストダウンとは、現在設定している原価をいかに下げるか、目標を設定して取組む全社的な知恵を使った活動ですので、原価管理とは異なります)

原価管理では「個別原価台帳」を作成し、その台帳に基づいて管理します。基本の流れは、①着工前に実行予算組み(計画粗利益の確認)を行う ②着工前に発注を済ませる ③現場で出て行く金(ミス・ロスの防止、追加変更の管理、手戻り工事の撲滅など)を洩らさず確実に管理する、この3点を実践し、竣工後に④差異分析(予実の差異)に基づく問題解決と反省会を行うことです。

実行予算を組むためには各工事、使う資材の原価が決められていることが前提となります。そして数量を正確に拾い出します。それには誰が積算しても同じ結果が出て誤差が出ない積算方法を決めたり、積算のルール、積算システムをつくることが重要です。

実行予算書は利益確保の道しるべです。従って実行予算書は着工前に完成させておくのが基本ですが、ここがどの会社も出来ないポイントになっています。この重要性については、上記にも書きましたが、別の回で説明いたします。

 

今回は3つの管理について説明しました。管理自体は普段行っていると思いますが、それぞれの管理について「標準化・システム化」を進めてほしいというのを特に伝えておきます。

次回以降、残りの6つの管理についても紹介いたします。

 

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