今回は9大管理の続きとして、資材管理、労務管理、安全衛生管理について説明いたします。
4.資材管理
資材管理とは、現場監督が会社で決めた仕様の資材を定められた単価で発注し、施工時までに現場に用意できるよう納材手配(準備)を行い、また納材直後には検品・検収をして間違いないことを確認することです。このように現場監督が現場で行う資材管理は設計で決めた仕様、品番、素材、色、数量の資材を現場の施工スケジュールに合わせて間違いなく確実に用意することが目的です。一方、会社がおこなう資材管理とは、使用する資材の仕様をできる限り絞り標準化する、よい資材をより安く購入する方法を開発する、資材メーカー或いは流通業者と定期的(1年に1ないし2度)に交渉し、購入する資材の標準的な購入価格(単価)を決める、納材方法と納材回数を決め、標準的な納材フローを確立する、といったことです。会社がルール・標準化をおこない、監督がそれに則って管理をすることになりますので、これをゴチャゴチャに考えないでください。現場監督が行う資材管理のポイントは、次の通りです。
・資材は着工前までに事前発注します。
資材の発注は資材発注管理チェックリストに基づいて実施すると間違いを犯しません。
・該当工事の着工する1週間前までには資材の納材手配をします。
・現場監督は立会い検収を必ず行う。
立会い検収ができない時は現場にいる信頼できる大工さんに任すこともあるが、その場合も「発注伝票」コピーを渡し、
仕様内容、寸法、数量に間違いないことを確認して受け取ってもらうことが大切です。
・現場への資材デリバリー方法・回数は施工の方法や現場敷地の広さ余裕、納材する道路の混雑度などに応じて、
資材デリバリーの最適な方法を考える。
また、現場で使用する資材は納材後どのように保管しておいたらよいか、その受け入れ体制を決めておく必要があります。これを決めておかないと“空いているところに置いておいてください”という一番悪い指示パターンになってしまいます。その結果、作業のとき再度移動したり、2度、3度置き場を変えているうちに傷をつけたり、一部紛失したりということになりかねません。これは「現場きれい」や「安全」にも関わる事項です。
5.労務管理
労務管理の目的とは、現場で実際に建築に従事している大工・職人・協力業者の方々が良品質住宅は実現させたり、質の良い大工・職人・協力業者はお客様の紹介をもたらす“優れた営業マン”でもあるため、彼らとパートナーシップを確立し、良い家づくりチームを築くのが労務管理の目的です。
大工・職人・協力業者は長年専門職として仕事をしてきた“プロ”ですから彼らより経験の乏しい現場監督の生半可な理屈や命令では動きませんし通用しません。簡単には現場監督の言うことを聞かないわけです。しかしお客様の大切な「家族の幸福の城」である住宅を彼らの好き勝手なやり方で工事をされてはCS実現もできず、会社で定めた品質もコストも守れません。現場は現場監督がしっかり管理する必要があります。そのための幹となるのが労務管理です。労務管理の基本となるのは現場監督(会社)と大工・職人・協力業者とのお互いの信頼感の確立です。
大工・職人・協力業者らと信頼の絆を築くには“共にCS実現と発展をめざす”パートナーシップをはっきり謳いあげたうえで責任と評価を明確にすることです。彼らのモラルを高めたいならば彼らを利用したり、騙したり、物事を曖昧にしてはいけません。あくまでも仕事は対等に行い、馴れ合いに陥らず管理責任は明確にします。そして現場に緊張感を持たせることです。そのポイントを以下に記します。
・ お客様からの信頼に基づいて仕事が生まれていることをよく理解させること
・「約束厳守」-自分も約束を絶対に守ること
・「仕上がり基準」と「期日」を明確にして仕事を依頼すること
・「仕上がり基準」は会社が定めた「基準」を基に判断すること
6.安全衛生管理
現場監督の安全衛生管理は、会社の基本方針に沿って定められる安全衛生基本計画に基づいて作成される「安全衛生基準」の確立とその実践管理、「現場きれい」活動との連動、「作業者の教育普及活動」による徹底 この3点が軸になります。とくに「現場きれい」活動との連動は、安全衛生管理を毎日の現場活動に組込み、日常の取組みとして行う意味からも大事です。“危ない”と感じたら規則や基準に沿わないことであっても現場監督の責任と裁量で判断し実施する“勇気”をもって安全衛生管理に臨むことです。
仮設計画は現場における全施工の準備ですから、そのなかでの安全衛生計画はとくに重要です。ここでしっかりした計画を組んでおかないと工事が始まってから“思いもよらない事故”を起こします。こうした事故は実は安全対策に手を抜いた結果であり、十分予測できたことであり予防できることがほとんどです。なかでも絶対に手を抜いてはいけないのは「重機を使用するとき」「落下が予想される高所作業時」「足場組み」などの重大事故が予想される工事の安全策です。
現場の安全衛生パトロールは現場の大工・職人のリーダーや安全管理者らと共に最低月1回必ず行います。安全衛生パトロールは現場で働く彼ら大工・職人の安全衛生意識を高めるために彼らが中心になって実施する必要があります。安全衛生パトロールに関しては現場監督はあくまでも管理者の立場で彼らを指導、サポートする側に回ります。安全衛生パトロールを行うときは安全衛生管理基準、安全衛生確認作業をもとに安全点検を行う個所、点検内容を明確にして行います。具体的な安全衛生点検個所、内容は事前にチェックリストにして大工・職人らに渡しておくようにします。
安全衛生管理に関する現場監督の役割として欠かせないのが大工・職人に対する安全衛生教育です。現場監督にとって安全衛生管理はとても大切な管理項目ですが、いくら“管理”を強化しても現場の安全衛生は実際に現場で作業する「本人」即ち大工・職人の自覚がない限り絶滅できません。彼らに自覚を促すのに必要なのが安全衛生の教育研修活動です。
安全衛生に関わる教育は、まだまだ不十分と言わざるを得ません。大工・職人の声を聞いたり工程確認を兼ねて、毎月1回現場の安全・危険事例を話し合うミーティングを実施するなどして、意識を高めていきましょう。
次回は、残りの3つの管理について紹介いたします。
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