「つくるプロセス=生産工程」の具体 「2.初回接客~」

2021/08/3010:16480人が見ました

こんにちは。

ひと・住まい研究所の辻󠄀です。

今回でようやく連載10回目となります。前回から少し間が空いてしまいましたが、引き続き「つくるプロセス=生産工程」の具体について、まとめてみたいと思います。

下に前回も掲載した「つくるプロセス」の全体フローを再掲しておきます。

今回は「2.初回接客」と「3.リピーター接客」の具体的な中身やポイントなどを中心に考えていきます。

なお過去の記事のリンク先も掲載しておきますので、ぜひ併せてお読みください。

・連載①「コロナ禍の今だからこそ、工務店としての軸をつくる|

・連載②コロナ禍の今だからこそ、工務店としての軸をつくる②|

・連載③工務店における「つくるプロセス=生産工程」のあり方|

・連載④「つくるプロセス」は、顧客に選ばれるための重要なコンテンツとなる|

・連載⑤自社スタイルの核となる「つくるプロセス」を確立する手順①

・連載⑥自社スタイルの核となる「つくるプロセス」を確立する手順②|

・連載⑦自社スタイルの核となる「つくるプロセス」を確立する手順③|

・連載⑧「つくるプロセス」を深める2つの存在|

・連載⑨「つくるプロセス=生産工程」の具体 ~「1.集客」~

 

2.初回接客

この「2.初回接客」は、先の「1.集客」で顕在化した顧客に対して、自社およびその家づくりのことをちゃんと「理解・納得してもらう工程」であると位置付けられます。

ここでのポイントは、接客(=営業)も家づくりにおける「説明・同意」という重要な生産工程の一部であると捉えることです。そこで必要となるのが、家づくりのプロとして、正しく的確な情報を分かりやすく伝えようとする意識です。

特にオーダーメイドの住宅においてはとても大切なことで、その意識が高ければ「伝える情報の質」も自ずと上がります。それが結果的に他社との差を生み出し、この工程の最大の目的である「有力な候補先」として認知され、その後の関係性を継続していけることにつながるでしょう。そうした情報をベースとして、自社の家づくりの考え方や取組みなどを上乗せするという順番が適切だと思います。

ここからは想定できるいくつかの接客の場ごとに分けて、それぞれの基本的なポイントを中心にまとめてみたいと思います。

 

建物完成見学会

・会場となる住まいを通じて自社の家づくりを体現し、「魅せる」ことに注力する

・実際の暮らしを疑似体験してもらえる場を設える

 → 座って寛げる場をつくる、その場に合った小物などで暮らしのシーンを再現する など

・家づくりにおける工夫やポイントなどを「見える化」する

 →細部の納まりや温熱環境などの見えにくいものを、パネルや見どころガイド、画像などで伝える

・外廻り(外構・造園)も完成してから開催したいところ。より住まいとしての豊かさを演出でき、顧客への印象付けが強くなる

・新型コロナ禍においてはオンラインとリアルのデュアル開催を検討したい

 

個別面談(事務所)

・自社のことや家づくりのポイントなどを、ちゃんと分かりやすくまとめた説明資料を用意しておく

・住まいの事例(どんな家をつくってきたのか)に対する顧客の関心は高いので、十分に整えておきたい

・事務所だけでなくオンラインでの開催も考慮して、説明資料はデータ化されていることが望ましい

・自社の「つくるプロセス=生産工程」をまとめた資料は、かなり強力な営業ツールになる

・そもそも顧客と面談するのに相応しい場を用意しておく

 

モデルハウス

・建物完成見学会と個別面談の内容を融合して「初回接客」における最強の場に仕立て上げよう

 

また当然のことですが、「顧客データの管理」も不可欠です。見込顧客をリスト化しただけのものではなく、来場者アンケートや接客時のヒアリングを基にした個人情報、ランク分け、接触および失客の履歴などの詳細な情報を記録しておきたいところです。そうしたデータは、後々、顧客動向の分析資料としても活用できます。

 

3.リピーター接客

自社およびその家づくりに対して、「好感・共感」を得るところまで高めていく工程と言えます。「2.初回接客」の顧客を、確実に「ステップアップ」させることが目標です。

顧客に選ばれるためには、特にこの「ステップアップ」の工程が大きな役割を果たすことになります。せっかく集客に成功しても、選ばれる途中で候補先から脱落ばかりしていては、集客に投資した意味がありません。

ここでのポイントは「ステップアップ」できる場を定期的に設けて、自社なりの「勝ちパターン」を構築することです。専属の営業担当者がいない会社は、ここが特に重要になります。完成見学会などの集客用のイベントの間に開催すると効率的です。

最近はYouTubeを含めたSNSの存在によって、ステップアップの期間が全体的に圧縮されている感はあるものの、この工程の存在が必要であることには変わりません。

では、今までと同じく、それぞれの「場」ごとに分けて具体的なポイントをまとめてみます。

 

住まい教室

・自社のことや家づくりに必要な各テーマをセミナー形式で伝える、「顧客ステップアップ」にとても効果的な場

・1回のセミナーは90~120分くらいのボリュームが適切

・売込みは極力控え、「客観的かつ正しい情報」を伝える意識がポイント

 →参加者から「へえ~」「なるほど」といった反応を引き出そう

・伝えたいテーマごとに資料(パワポ)を作成して、数回に分けて開催してもよい

 →基本性能、プランニング、資金計画、メンテナンスなど

・住まい教室の内容を小分けにすれば、YouTubeでの発信にも使える

 

住まい手宅見学会

・住まいと暮らしの実例を一緒に確認することができ、かつ住まい手さんの生の声も聞くことができる「顧客ステップアップ」最強の場

・住まい手さんを囲んで団欒しながら、家づくりのプロセスやストーリー、暮らしぶりを語ってもらう時間もセッティングできるといい

・少々手間はかかるが、オンラインでの開催も可能

 

構造見学会

・工務店の本分である「つくること」へのこだわりや姿勢を訴求したい

・建築現場のあり方(安全衛生面・現場美化・近隣への配慮など)や、完成時には隠れてしまう重要箇所を見学できるように工夫することがポイント

 

今回の2つの工程(初回接客・リピーター接客)において、「伝えるスキル」の高い人物の存在が必要になります。連載⑧でも取り上げた、家づくりに関する一定以上の知識が備わっている「セールスエンジニア」と呼べる人のことです。

彼らがこの工程で果たす役割はとても大きく、この役割をこなせる人材を育成することは、注文住宅を主力商品としている地域工務店にとって極めて重要です。

そして「顧客のステップアップ」には、自社の「つくるプロセス=生産工程」自体が、大きな後押しになり得るのです。

 

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